新型コロナウイルス感染症により、影響を大きく受けた事業主も多いでしょう。事業を継続するために、従業員に給料を支払うために、国からお金をもらう手続きをしている会社も多くなっています。
しかし、補助金・助成金が会計上どのように扱われるか知っていますか?もらうだけもらったが、後で色々なことが発覚して取り返しがつかないことになったということにならないよう、しっかり知識を蓄えて行動していきましょう、
ここでは、補助金や助成金の会計処理方法や留意点まで解説します。
【補助金とは】
補助金は、経済産業省の政策に関わるものに多く使われています。補助金は条件を満たしていても受けられるとは限らず、一般的に高倍率の難しいものが多いでしょう。経済産業省の補助金は厚生労働省の助成金に比べて大きな金額が支給されることが一般的です。
【助成金とは】
助成金は、厚生労働省の政策に関わるもので多く使われています。助成金は雇用の増加や雇用の安定、社員の能力開発などを対象にしたものが多く、経済産業省の補助金に比べればより間口が広いと言えるでしょう。金額も小さい傾向にありますが、その分条件さえ満たせば助成金の支給を受けることができるケースが多いです。
【補助金・助成金は課税?非課税?】
補助金や助成金は、すべての税において課税対象になるわけではありません。補助金や助成金は法人税の計算の上では収入として扱われるため、法人税においては『課税』対象となります。したがって、補助金や助成金も含めた収益から費用を引き、その差額について通常通り課税が行われます。
しかしながら、消費税については、補助金・助成金は課税の対象となりません。それは、消費税の課税対象が「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取り」と定められているからです。補助金・助成金は事業者が事業に対しての対価として得るものではないので、消費税が課されません。
【課税対象とならない補助金・助成金のケース】
例えば1,000万円の助成金をある企業が受け取ったとしましょう。この企業の収益が助成金とは別に5,000万円、費用が2,000万円ある場合、この5,000万円が対価に応じた収益であれば全て消費税の課税対象です。しかし、1,000万円の助成金については、消費税は課税されません。法人税については、5,000万円から消費税を差し引いたもの(およそ4,630万円)と1,000万円を足し合わせた額から2,000万円を差し引いたものについて法人税が課税されます。
【会計処理をするときの注意点】
補助金や助成金は、貸方の勘定科目においては「雑収入」が一般的です。借方は普通預金・当座預金などを勘定科目とすると良いでしょう。
補助金や助成金の仕訳は一般的に、補助金や助成金を支給する組織から支給決定通知書が事業者に到着したタイミングで行います。給付決定通知と入金が短い期間に行われる場合、先述のように貸方の勘定科目は「雑収入」とし、借方は普通預金・当座預金などを勘定科目と処理すれば問題はないでしょう。
※決算期をまたぐ場合
政府や自治体によって支給される助成金・補助金の多くは、申請を行ってから採択決定・支給決定まで時間がかかります。そこから実際に入金されるまでにも、さらに時間がかかることがあるでしょう。このように長い時間がかかる助成金・補助金はしばしば会計年度をまたぐため、それに応じて適切な会計処理を行わなければなりません。
会計年度をまたいでしまう場合は、借方を未収入金の勘定科目として仕訳を行いましょう。この時、貸方は上記と同様に雑収入とします。補助金・助成金が実際に入金されたら借方は普通預金などの勘定科目とし、貸方は未収入金の勘定科目を用いて仕訳を行いましょう。
【会計処理を誤った場合のペナルティ】
補助金や助成金についても通常の会計処理と同様、計上漏れとなった場合にはペナルティがあります。期限内に提出された申告書に記載された納税額が本来より少なければ、過少申告加算税が課せられます。過少申告加算税は修正の結果新たに納めることになった税金の10%相当額とされ、本来収めるはずだった税金とともに納めなければなりません。これとは別に、納税が遅くなった分だけその利息に当たるものとして延滞税が課されることがありますので気をつけましょう。
【不正受給をしたら…】
もちろん、不正受給には厳罰が待っています。補助金だと受給額だけでなく年10.95%の加算金というペナルティを払う他、官公庁のホームページに事業主名が掲載されたり、詐欺罪として起訴されたりします。
当然、社会的信用が大きく失墜する結果となり、事業の存続にもかかわる事態に陥る可能性も高いでしょう。
【支給までには時間がかかる】
申請をしたらすぐ受給できるわけではありません。申請者も膨大に増えていることもあり、助成金の審査がスムーズに行われても支給が受けられるのは、最短で2カ月後くらいを見ておいた方が良いでしょう。資金繰りを考える上で雇用調整助成金を頼みにしている場合は、当面の運転資金とは切り分けて捉えるようにしましょう。
【まとめ】
補助金や助成金は、支給された時点で終わるものではなく、その後の会計処理も適切に行わなければなりません。計上漏れとなった場合には過少申告加算税や延滞税などのペナルティがあり、思わぬ損失を生んでしまいます。固定資産を取得する場合には特別償却・税額控除など他の制度を利用した方がいいケースもあります。支給までに時間も掛かることから、資金繰りをしっかりと計画する必要もあります。これらを判断するには経験と知識が欠かせないので、プロの税理士への相談をおすすめします。
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佐藤等公認会計士事務所
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