「現在一人親方で、収益が増えてきたから法人化しようか悩んでいる…具体的なメリットやつまずきそうなポイントが知りたい」
そのような悩みを抱えた方に向け、この記事を書かせていただきました。
今回は、税のプロである「アウル税理士法人」が、一人親方が法人化した際のメリット・デメリットと注意点を解説させていただきます。
先に結論をお伝えすると、以下の通り。
- メリット「仕事がしやすくなる」
- デメリットは「お金と手間がかかること」
- 注意点「建設業許可」が必要かどうか
それぞれ詳しくは本文で解説しておりますので、ぜひお役立てください。それでは、早速見ていきましょう。
一人親方が法人化する4つのメリット
一人親方が法人化する主なメリットは以下の通りです。
- 税負担が軽くなる場合がある
- 社会的信用が高くなる
- 決算日を自由に設定できる=閑散期に書類作成ができる
- 有限責任となる=万が一の時も生活が続けられる
一つひとつ説明していきます。
1.税負担が軽くなる場合がある
法人化すると、個人事業主の時と比べ経費として計上できるものが増えます。例えば、法人税では給与を経費として計上でき、所得税よりも税額が低くなることも。
具体的には、年収が1,000万円を超える場合は、法人税の方が税負担が軽くなるケースが多いです。詳しくは以下の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
詳しい税率については、国税庁のページで公開されているため、ご自身で計算されたい方は以下のページを参考にしてください。
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」、国税庁「No.5759 法人税の税率」
また、法人化すると赤字繰越の期間が3年から10年に延びるため、黒字と相殺し結果としてかかる税金が少なくなるケースも多くあります。
2.社会的信用が高くなる
一般的に、個人事業主よりも法人化している方が社会的信用が高いと見られる場合が多いです。
社会的信用が高いということは、以下のようなメリットがあります。
- 仕事を受けやすくなる
- 融資を受けやすくなる
- 事業拡大がしやすくなる
3.決算日を自由に設定できる=閑散期に書類作成ができる
法人化すると、決算日を自由に設定できるようになります。
個人事業主ですと、毎時2月中旬〜3月中旬ほどに決算があり、公共工事の繁忙期と被ることに。決算報告書の作成は何かと時間がかかりますから、仕事が落ち着いている時期に行いたいですよね。
決算日が自由に設定できれば、工事の繁忙期を避けて書類作業ができるメリットがあります。
4.有限責任となる=万が一の時も生活が続けられる
法人化すると「有限責任」となり、負債が多く万が一倒産した時でも負債額返済の責任が出資額までとなる制度です。
これに対して、個人事業主は「無限責任」であり、負債全ての返済をしなくてはいけません。つまり、個人の財産を売却してでも返済しなくてはいけなくなります。
このように、有限責任となることもメリットの一つと言えるでしょう。しかし、会社として融資を受ける際、「社長の個人保証」を求められている場合は、実質的に無限責任となってしまう点には注意が必要です。
一人親方の法人化はメリットだけではありません。次の項目でデメリットについても紹介します。
一人親方が法人化する4つのデメリット
反対に、一人親方が法人化するデメリットは以下の通り。
- 赤字だとしても、法人住民税を払わないといけない
- 税務が煩雑化する
- 法人設立に10万~25万ほどかかる
- 社会保険料がかかる
ざっくり言うと手間とお金がかかるわけです。細かく見ていきましょう。
1.赤字だとしても、法人住民税を払わないといけない
法人化すると、法人住民税というものが発生し、赤字だったとしても最低7万円以上は払わなくてはいけません。
個人事業主であれば、通常の住民税であり、赤字であれば免除となるため非常に大きな差と言えます。
2.税務が煩雑化する
法人化すると、「法人税」「法人住民税」「法人事業税」など、かかる税の種類が変わります。そのため、個人事業主時代に行っていた計算方法では対応できない場面が多く、結果として税務が煩雑化してしまいます。
税金については、専門的な知識が必要なことが多く、額を誤ってしまうと手間と金額がさらにかかるので、事前にプロに相談することをオススメします。
弊社でも50分無料相談を行っておりますので、お悩みのことがあればお気軽にご相談ください。
3.法人設立に10万~25万ほどかかる
法人設立時には「収入印紙」「公証人費用」「登録免許税」など様々なお金がかかります。ざっくりとした額は以下の通り。
- 合同会社:約10万円
- 株式会社:約25万円
以上のように、法人化には手間とお金がかかります。
では、どういったタイミングで、お金を払ってでも法人化した方が良いのでしょうか?次の項目ではタイミングのお話しをします。
4.社会保険料がかかる
まずかかるお金の一つに、社会保険料があります。社会保険料は、会社と従業員の折半ですが、一人親方のままであれば、国民健康保険と大きな差はありませんが、今後従業員を雇った時には社会保険料の負担が大きくなることを覚えておきましょう。
一人親方が法人化するタイミングの目安
ここでは、一人親方が法人化するベターなタイミングを紹介します。
- 社会保険に加入したいとき(特に労災保険)
- 従業員を採用したいとき
- 売上が1000万円を超えた時
社会保険に加入したいとき(特に労災保険)
法人化すると、社会保険に加入することができます。社会保険の中には、年金を国民年金より多くもらえる「厚生年金保険」や、労働中のケガなどに適用される「労災保険」などがあり、万が一に備えて保険をかけることができます。
労災保険については、基本的に経営者は対象外となりますが、一人親方は「特別加入制度」を使用することによりご自身にも労災保険をかけることができます。詳しくは厚生労働省配布の「パンフレット」をご覧ください。
社会保険にはもちろん「健康保険」も含まれているため、個人事業主の頃よりも手厚い保険をご自身や今後の従業員にかけることができます。
従業員を採用したいとき
今後一人親方でなく、従業員を採用したいと考えている場合は法人化がオススメです。理由は、先ほどお話しした社会保険がつき、福利厚生が手厚くなることで従業員の応募が増えるケースが多いためです。
また、メリットの欄でお話しした「仕事を受けやすい」「融資を受けやすい」などの理由もあり、事業拡大において従業員の確保は切っても切り離せない問題ですので、今後事業を大きくしたいと考えている方は法人化した方が良いケースが多いです。
課税所得が900万円を超えたとき
900万円を超えると、消費税の税率よりも法人税の税率の方が低くなることがあります。金額により異なるため細部はご相談いただきたいのですが、900万円を一旦のボーダーラインとして考えましょう。
売上が1000万円を超えたとき
法人化すると、2年間消費税が免除されます。個人事業主で売上が1000万円を超えた段階で消費税が発生してしまうので、そのタイミングで法人化する方が多いです。
昔はこのタイミングがベスト!とも言われていたのですが、インボイス制度の登場により免税されれば良い、という時代は終わりを告げました。インボイス制度について詳しくは以下の記事で解説しておりますので、合わせてご覧ください。知っているかどうかで仕事の受注に大きな差が出ることが予想されます。
一人親方から法人化する流れ・手続き
一人親方から法人化する流れは以下の通りです。
- 基本事項の決定
- 定款の作成と公証人による認証
- 資本金の払込
- 登記申請書の作成と登録申請
必要となるもの
- 個人の実印と印鑑証明:会社の実印作成のため必要
- 会社の実印:法務局での登録が必要
基本事項の決定
会社の形態や商号(社名)、事業目的など基本事項の決定をしていきます。会社の印鑑については、この段階で発注してしまうことをオススメします。
定款の作成と公証人による認証
基本事項を定款(基本規約・規則)に落とし込んで、書類の準備を進めていきます。必要となる書類は会社形態により異なりますので、ご自身の状況に合わせてご用意ください。
書類の準備まで完了したなら、定款認証を行います。公証役場に作成した定款を送信、公証人による認証を受けます。
資本金の払込
ここまでに資本金を用意しておきます。この時、一般建設業許可であれば「500万円以上」、特定建設業許可であれば「2000万円以上」などの要件があるため、今後請け負う予定の契約を確認しておきましょう。
登記申請書の作成と登録申請
登記申請書を作成し、法務局に登録申請を行います。無事申請書が受理されれば、個人事業主から法人になります。
上記に加え、依頼請負内容によっては「建設業許可」が必要となる場合もあります。詳しくは次の項目で解説しましょう。
一人親方が法人化する時は「建設業許可」に注意
通常の会社と異なり、一人親方は「建設業」にあたるため、特別な注意が必要です。特に「建設業許可」については細心の注意を払う必要があるため、ご説明します。
建設業許可は、500万円以上の工事を請け負う際に必要な許可です。
例外として、以下の2つは建設業許可なしでの工事が可能となっています。
- 建築一式工事:工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事又は延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事
- 工事1件の請負額が500万円未満
これらの状況を除く、28種類の建築業では全て建設業許可が必要となる可能性が出てきます。許可の要件などについては、国土交通省のホームページにて公開されているため法人化前にご覧ください。
具体的には「許可を取得する先」と「資本金がいくら必要か」、「特別建設業許可を受ける必要があるか」について確認する必要があります。
まとめ
今回は、一人親方が法人化した際のメリット・デメリットと注意点についてお話しさせていただきました。最後にポイントを振り返りましょう。
- 税負担が軽くなる場合がある
- 社会的信用が高くなる
- 決算日を自由に設定できる=閑散期に書類作成ができる
- 有限責任となる=万が一の時も生活が続けられる
- 赤字だとしても、法人住民税を払わないといけない
- 税務が煩雑化する
- 法人設立に10万~25万ほどかかる
- 社会保険料がかかる
- 建設業許可に注意が必要
法人化後の経営サポートが必要な場合は、税金のプロ「アウル税理士法人」にご相談ください。50分の無料相談も行っておりますので、「法人化しようか迷っている」という一人親方のご相談も大歓迎。まずはお気軽にお問い合わせください。
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