企業が買収される場合、お互いの合意の上で行われる友好的買収が一般的です。しかし、合意の有無に関わらず株式を大量に購入することで、企業の支配権を強引に奪う敵対的買収もあります。敵対的買収防衛策のひとつとしてポイズンピルという方法が有効的です。
今回は、ポイズンピルについて詳しく解説します。
将来性のある上場企業は、敵対的買収の標的にされやすい傾向にあります。敵対的買収を受けても経営権を失わないために、正しい知識を身につけておきましょう。
- ポイズンピルとは、新株を発行することで敵対的買収を阻止する防衛策
- ポイズンピルは敵対的買収に対する抑止力としての効果をも期待できる
ポイズンピルとは?
ポイズンピルとは、新株を発行することによって敵対的買収を阻止する防衛策です。
企業が新株を発行し、事前に敵対的な買収者を除く既存の株主に対して時価よりも安く購入できる新株予約権を与えます。新株予約権が使われた場合、新株が発行されて市場に出回る株式数が増加するため、敵対的な買収者の持ち株比率が低下します。支配権を獲得するためには50%以上の株式を所持することが必要です。ポイズンピルが行われると、支配権の獲得のために、より多くの株式を購入する必要があり、買取コストが増えます。
コストが増えることで、相手側が敵対的買収を断念することが期待できるという仕組みです。
ポイズンピル(Poison Pill)は、を直訳すると「毒薬」。
敵対的買収者は、株式を買い増しているにもかかわらず、新株予約権が行使されると持株比率が低下し、買取コストも増えます。敵対的買収者のみに不利に働くことで、毒薬を飲まされるようなイメージから、ポイズンピルと呼ばれています。
ポイズンピルの具体的な施策
ポイズンピルには大きく2種類の施策があります。
- 事前警告型ポイズンピル
- 信託型ポイズンピル
それぞれの施策について解説します。
事前警告型ポイズンピル
- 敵対的買収が仕掛けられる
- 敵対的買収を行った企業に対して買収目的の開示を求める
- 有効的な回答が得られなかった場合、新株発行を実施する。
敵対的な買収者が現れた時、事前警告型ポイズンピルを導入する企業は、買収目的の開示を求め、買収目的によってはポイズンピルを発動する可能性があると警告します。買収側の目的が曖昧な場合や、納得できない理由だと判断した場合に、新株予約権を発行します。
しかし、買収側が事業計画を作成している場合や、納得できる回答が返ってきた場合には新株発行が実施されません。新株発行が実施されない場合の多くは、買収側が提示した事業計画などの情報を株主に公開する流れが一般的です。株主が買収側に興味を示すと、買収がスムーズに進む可能性が高まります。買収を防ぎたい場合には別の対抗策を練る必要があります。
信託型ポイズンピル
- 自社の経営状態から、敵対的買収のリスクがあると判断する
- 新株予約権を発行して信託銀行に預けておく
- 敵対的買収が実施されたタイミングで、株主に対して新株予約権が発行される
将来的に敵対的買収のリスクがあると考えられる場合には、信託型ポイズンピルという手法が有効的です。
信託型ポイズンピルの実行は、新株予約権を預けた信託銀行が行います。敵対的買収が発生した場合に、買収される側の企業は手続きをする必要がないため、ポイズンピル実施の手間やコストを抑えられる仕組みです。
スムーズに敵対的買収を防止できる手法ですが、新株予約権が敵対的買収を行った企業にわたってしまうリスクに注意する必要があります。事前に譲渡制限を設けるなど、新株予約権の発行時に対策を練っておくことが大切です。
他の敵対的買収への防衛策についても知りたい方はこちらもご覧ください。
日本で行われているポイズンピル
どのようなポイズンピルが実際に行われているのでしょうか?
日本で行われている買収の多くは、敵対的買収ではなくお互いに合意の上で行われる友好的買収です。敵対的買収を実際に行うと、買収自体が成功した場合でも、買収した企業と買収された企業の従業員間で、話し合いがうまくいかないことも多くあります。そうなるとM&A自体が白紙となってしまうため、敵対的買収は敬遠されがちです。
そのため、抑止力や最終兵器としてポイズンピルを導入したりしている会社がほとんどです。特に大きな魅力や将来性がある株式会社は、敵対的買収の標的になりやすい傾向にあるため、万が一に備えて、抑止力としてのポイズンピルの導入は有効的な手段だといえます。
実際に行われたポイズンピルの事例
実際にポイズンピルが使われた事例をご紹介します。
ニッポン放送によるポイズンピル活用事例
ライブドアがニッポン放送の株式を35%保有していることが明らかになったことをきっかけに、2005年、ニッポン放送は当時の子会社であったフジテレビジョンに新株予約権の発行を発表。ニッポン放送はポイズンピルの発動に動きましたが、裁判により新株予約権の発行を断念することとなりました。ニッポン放送の争奪戦を巡っては、最終的には和解に至りました。
ブルドックソースによるポイズンピル活用事例
国内企業初の、ポイズンピルの活用によって敵対的買収が防衛された事例です。
2007年にブルドックソースがポイズンピルを活用し、スティール・パートナーズによる敵対的買収から身を守りました。
他にも、以下の企業が実際にポイズンピルを導入している企業として挙げられます。
- イオン
- GMOインターネット
- 森永製菓
おわりに:敵対的買収の最適な回避策をお探しの方は専門家サポートも検討を
今回は敵対的買収の防衛策の1つであるポイズンピルについて解説しました。
ポイズンピルは実際に新株発行を実施しなくても抑止力としての効果を期待できます。しかし、ポイズンピルを示唆しても、敵対的買収を強行する企業が存在するのも事実です。特に将来性がある株式会社は、敵対的買収の標的になりやすい傾向にあるため、正しい知識を身につけておくことが大切です。
「ポイズンピルを実際に導入したい」
「敵対的買収の最適な回避策を見つけたい」
という方は、一度専門家からアドバイスを受ける事もおすすめです。
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