複数の会社を統合する合併(Mergers)と、会社の経営権を手に入れる買収(Acquisitions)を意味するM&A。
近年の日本では、人口減少による市場縮小や後継者不足などの問題から、中小企業を中心にM&Aが加速しており、このトレンドは今後も続いていくと予想されています。
事業譲渡や合併、資本業務提携など、M&Aにもいろいろな形態がありますが、企業の買い手・売り手としてさまざまなリスクに備えなければなりません。
そこでこの記事では、M&Aに潜むリスクや注意点について解説していきます。リスクを回避し、M&A後も円滑に経営するためのポイントもご紹介します。
M&Aのリスク・注意点は3種類ある
M&Aをおこなうときのリスクや注意点は次の3つがあります。
- 人材リスク
- 財務リスク
- 経営リスク
人材リスク
M&Aは一般的に、経営者同士の同意のもとでおこなわれますが、従業員がM&Aについて理解しているパターンは少なく、納得してもらえない可能性があります。
従業員が納得していない場合、経営統合後の人的トラブルや雇用条件の変更をきっかけに優秀な人材が流失してしまう可能性があります。
優秀な人材が欠け、従業員同士のシナジーが発生しない状態では、期待していたほどの効果は得られません。M&Aの際には従業員がどうなるのか、配慮しておくことを心がけましょう。
財務リスク
M&Aでは、譲渡企業(売り手)の財務状態の正確な把握が欠かせません。なぜなら、貸借対照表に計上されない簿外債務に財務リスクが潜んでいる可能性があるためです。
株式譲渡契約では、簿外債務が存在していないことを表明・保証をする場合が多く、あらかじめ保証をしておいた方が安全ともいえるでしょう。
M&A後に簿外債務が見つかった場合、その負債に対応するほか、契約違反による責任追求や損害賠償請求などの訴訟問題に発展する事例も存在します。
簿外債務とは?M&A時に必ず確認すべき重要項目を解説
くわえて、企業買収の際に多額の「のれん代」が生じる場合も注意が必要です。譲渡企業(売り手)の純資産額と実際の譲渡価格の差額のことを「のれん代」といいますが、のれん代は毎年少しずつ費用に振替えることになるため、利益を圧迫する原因になります。
経営リスク
M&Aでは、譲渡企業(売り手)が抱える経営リスクにも注意が必要です。経営上のリスクにはさまざまなものがありますが、近年増加中のリスクとして挙げられるのが、労務トラブルです。
労務管理が正しくなされていない、労働基準法が遵守されていない、残業代が未払いといった労務関係のトラブルは、譲受企業がそのまま引き受けることになります。
「働き方改革」に真摯に取り組んでいるという企業イメージを築いている場合、自社(買い手)のイメージを守るためにも、譲渡企業(売り手)が同様の意識を持っているかは見ておいた方が良いでしょう。
M&Aのリスクを回避するために重要なこと
ここでは、M&Aのリスクを回避するために重要なポイントを解説します。
譲渡企業の正確な経営実態を把握する
M&Aにおける財務リスク、経営リスクを回避するためには、譲渡企業(売り手)の正確な経営実態を把握しておく必要があります。
そこで有効なのがデューデリジェンス(DD)というプロセスです。デューデリジェンスとは、譲受企業(買い手)が譲渡企業(売り手)の経営環境や事業内容などを財務・税務・法務などのさまざまな観点から調査することを指し、企業の価値、将来の収益性やリスクを調査・分析します。
調査の主要項目は「事業」「財務」「税務」「法務」「人事」「IT」の6分野ですが、中小企業の場合は「事業」「財務」「税務」「法務」の4項目が特に重視され、多くの場合においてそれぞれの専門家が担当します。
デューデリジェンス(DD)はM&Aにおいて最難関ともいわれるプロセスですが、M&Aの成否を分けるプロセスであるため、しっかりと取り組む必要があります。
経営統合後の用意をしておく
M&Aが無事完了すると、統合段階のプロセス(PMI)が始まります。PMIでは、M&A後の両社の経営方針や業務ルール、社員の意識を融合させる「経営管理体制の構築」を行います。
譲受企業(買い手)は具体的な交渉前からPMIの準備をしておきましょう。
社内研修や広報など、統合後の用意をしておくことでM&A完了後のビジョンも明確になり、譲渡企業(売り手)や従業員が抱える不安を軽減できます。
おわりに:最適なM&Aを行うためには専門家サポートも検討を
この記事では、M&Aに潜むリスクや注意点について解説しました。今後も増加を続けるとされるM&A。3つのリスクとその準備についてしっかりと知識を持ち、来たる事業売却、合併、資本業務提携等に備えくださいね。
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