後継者不足などの理由で廃業する会社は、比較的安く購入できる場合が多いです。事業やノウハウを獲得することができるなど、新規で起業する労力と比較すると、メリットもたくさんあります。
しかし、廃業する会社の購入を検討する方の中には「購入前にデメリットをしっかり把握しておきたい」という方が多いのではないでしょうか?メリットとデメリットをしっかり把握することで、不安要素を減らすことができ、最適な判断を行えます。
今回は廃業する会社の購入に興味がある方に向けて、
- 廃業する会社の買い方
- 廃業する会社を買うメリットとデメリット
- 成功するための秘訣
をご紹介します。
廃業する会社の購入を検討している方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
廃業する会社の買い方
廃業する会社の買い方として、以下の3つの方法があります。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 会社分割
それぞれについて詳しく解説します。ご自身の状況に合わせて適切な方法を選びましょう。
株式譲渡
会社の株主(売り手側)が、買い手側に対して50%以上の株式を対価と引き換えに譲渡するM&Aの種類を「株式譲渡」といいます。これにより株式譲渡された会社は買い手側の子会社になります。
他のM&Aの種類と比べて取引が簡単で便利なため、株式譲渡はM&Aの中で最も一般的に使われている手法です。
基本的に株式譲渡の場合は、会社の所有者が変わるだけで、会社に属する従業員や資産、契約などを全て承継できます。
取引は、売り手と買い手が合意した内容の株式譲渡契約書(SPA)を締結し、株式の対価の支払いと、株主名簿の書き換えのみで完了します。
事業譲渡
企業全体ではなく、特定の事業だけを譲渡するM&Aの種類を「事業譲渡」といいます。売り手側が一部の事業だけを譲渡したい場合や、買い手側が赤字の事業を承継したくない場合などに利用されます。
会社のすべてを譲渡する株式譲渡に比べて、各種契約の結び直しや許認可の再申請、従業員の再雇用などが必要となる場合が多いため、事業譲渡は手続きが複雑になります。
会社分割
会社の中から特定の事業を切り分けて、他の会社に承継させるM&Aの種類を「会社分割」といいます。企業再編を目的に利用されることが多い手法です。
会社分割の場合、売り手側企業を分割会社、買い手側企業を承継会社と呼びます。会社分割の対価は、承継会社の株式で、現金を対価として使うことはできません。
廃業する会社を買うメリット
廃業する会社を買うメリットとして、以下の7つが挙げられます。
- コストを抑えられる
- 買収後すぐに利益を出せる
- 従業員を確保できる
- 顧客や取引先を確保できる
- 経営状況を見直すことで立て直せる
- ノウハウを獲得できる
- 節税できる
コストを抑えられる
廃業する会社は「後継者が見つからない」「倒産を回避したい」などの何かしらの事情を抱えているため、通常よりも安く購入できます。サラリーマンが個人貯蓄で購入するケースも珍しくありません。
起業コストを抑えられると、資金面で余裕が生まれるため、大きなメリットになります。
しかし、売却価格が安いのは会社の価値が低いからであるため、安ければ得をするというほど簡単ではありません。自社が持っているノウハウや経営資源を使って、黒字化できそうな会社を見極めて買うことが大切です。
買収後すぐに利益を出せる
買収後すぐに利益が出ることも、廃業する会社を買うメリットのひとつです。
ゼロから事業を立ち上げる場合、安定するまでに多大な時間とコストがかかります。
その点、廃業する会社を買う場合は、培われたノウハウや技術、顧客や取引先といった経営資源を活用できるため、時間をかけずに利益を得られます。
ただし、経営不振の会社を買った場合はまず黒字化が必要になるため、注意が必要です。
従業員を確保できる
廃業する会社を買う場合、そこで働いている従業員を引き継ぐことができます。採用コストを抑えられる上に、技術・ノウハウを持つ人材であるため即戦力になってくれます。
顧客・取引先を確保できる
起業直後に苦戦することが多いのが、顧客・取引先との関係構築。起業直後は会社としての実績がないため、顧客・取引先から信用してもらうのが難しいからです。
その点、廃業する会社を買う場合は顧客・取引先を引き継ぐことができます。経営が軌道に乗るまでの時間を短縮することが期待できます。
もし始めたい事業と同じ事業を営む会社がある場合、廃業する会社を買うのは有力な選択肢の一つです。
経営状況を見直すことで立て直せる
経営不振で廃業する会社は、赤字経営であることが想定されます。赤字の会社を買うことは、一般的にはよい選択といえません。しかし、自社のノウハウや経営資源を使って黒字化を目指せる場合は、その限りではありません。
赤字の会社は売却価格も安いため、黒字化できれば、効率よく事業拡大を実現できる可能性があります。
ノウハウを獲得できる
歴史を持つ企業は、独自のノウハウを持っていることが考えられます。
廃業する会社を買うことで、長年の試行錯誤の上で作られたノウハウを獲得できるのは大きなメリットとなります。
節税できる
廃業する会社を買うことで節税ができる場合があります。経営不振で廃業を検討している赤字企業の繰越欠損金と自社の利益を相殺して節税する方法です。
ただし、繰越欠損金の引き継ぎには条件があるため、税理士や公認会計士などの専門家と相談して引き継ぐことができるかどうかを判断する必要があります。
廃業する会社を買う時に押さえておきたいデメリット
廃業する会社を購入する際は、デメリットも含めて慎重に検討しましょう。
廃業する会社を買うデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 簿外債務(見えない借金)が残っている可能性
- 従業員・取引先離れ
- 役員や従業員との軋轢
簿外債務(見えない借金)が残っている可能性
財務状況をよく調べずに廃業する会社を買うと、買収成立後に簿外債務が発覚するリスクがあります。簿外債務とは、貸借対照表に計上されない債務、つまり見えない借金のことです。
代表的な簿外債務には、未払費用・リース債務・退職給付引当金などがあります。原則として買い手が費用を負担しなければなりません。
簿外債務のリスクを回避するために、入念なデューデリジェンスを行うことが大切です。
公認会計士や税理士などの専門家に依頼して、廃業する会社の財務状況をチェックしてもらいましょう。
従業員・取引先離れ
廃業する会社を買うことで、従業員や取引先も獲得できます。しかし、買収に対して従業員や取引先から理解が得られなければ、従業員が退職してしまったり、取引を中止されてしまったりする場合もあります。雇用条件や取引内容を大きく変更しないことや丁寧にコミュニケーションをとっていくことが大切です。
役員や従業員との軋轢
廃業する会社を買うことで軋轢が起こってしまう場合があります。
長年働いてきた役員や従業員は会社に愛着を持っていることも多く、反発されるケースもあります。役員や従業員との軋轢を避けるためには、廃業する会社を買う前に経営者や役員からヒアリングを行い、社員との関係性について聞いておくことが大切です。
廃業する会社を買う際の重要・成功ポイント
廃業する会社の買収を成功させるために、気をつけるべきポイントを紹介します。
儲かっているのに廃業する会社
後継者不在や経営状態の悪化が近年の中小企業の廃業理由であることが多いですが、そのほかの原因も考えられます。
特に儲かっているのに廃業する会社を買う場合は、廃業理由を明確に把握しておくことが大切です。そうすることで、買収前から対策を立てることができ、買収の成功につながります。
赤字で廃業する会社
赤字経営で廃業する会社を購入する場合、個人保証や担保を押し付けることを目的とする売り手もいるため、注意しましょう。
ただし、引き継いだ事業を立て直す自信がある場合は、負債を背負ってでも引き継ぐ価値はあります。
財務管理の精査
廃業する会社を買う際は、財務管理の精査を行いましょう。想定外の簿外債務(見えない借金)が後から発覚すると大変です。廃業する会社を買う前に専門家に依頼してデューデリジェンスを実施しておきましょう。
おわりに:最適なM&Aを行うためには専門家サポートも検討を
今回は、廃業する会社の買い方、メリットとデメリット、成功するための秘訣について解説しました。廃業する会社を買う場合は、さまざまなポイントを考慮しながら慎重に検討する必要があります。自力では調べきれない部分も多いため、専門家に相談することをおすすめします。
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