紙の書類を保存できなくなる?!電子帳簿保存法の改正とは?【2022年】

令和4年1月1日から施行された、改正電子帳簿保存法。

話には聞くが、実際に何が変わったのか、自分の事業に関係があるのかと、不安に感じている事業者様もいらっしゃるかと思います。

どんなところが変わったのか、一緒に確認していきましょう。

紙の書類を保存できなくなる?!電子帳簿保存法の改正とは?【2022年】

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、「国税関係の帳簿や証憑などの全部または一部を、電子データで保存してもよい(または、保存しなければならない)」という法律です。

保存するスペースや印刷にかかるコストなど、書類を紙で管理することによってかかる負担を電子化によって軽くする、いわゆる「ペーパーレス化」をすすめることが目的です。

5つの改正を紹介

おおきくわけて5つの改正があります。

①承認制度の廃止

従来:事前に所轄税務署長の承認を受けることが前提
→ 改正後:承認制度を廃止、一定の要件を満たせばOK

これまで電子データで保存するためには、事前に申請書を提出し、承認を受ける必要がありましたが、これからは一定の要件を満たすと、申請をしなくても保存できるようになります。

対象

  • 帳簿
    →自分でコンピュータを使い作成する帳簿
    (仕訳帳、総勘定元帳、売上帳など)
    ※令和4年1月1日以降に開始する事業年度分から適用できます。
  • 書類
    →自分でコンピュータを使い作成する決算関係書類、取引先へ交付する書類のコピー
    (損益計算書、貸借対照表、領収書の控、見積書の控など)
    ※令和4年1月1日以降に保存したデータに適用されます。
  • スキャナ保存
    →自分が作成し取引先へ交付する書類のコピー、取引先から受け取った書類
    (契約書、納品書、請求書など)
    ※令和4年1月1日以降に保存したデータに適用されます。

自分ではじめから一貫して作成するのであれば、国税関係書類も電子データで保存することができます。

参考:国税庁
はじめませんか、帳簿書類の電子化!
はじめませんか、書類のスキャナ保存!

②優良電子帳簿システムで作成された帳簿データの優遇制度

従来:なし
→改正後:事前の届出をすると、万が一申告漏れがあったときの過少申告加算税を一部減免

一般的に、過少申告加算税は「申告漏れによる追加納付額×5%~15%相当」です。

それが優良な電子帳簿であれば、元の過少申告加算税の金額から「申告漏れによる追加納付額×5%相当額」を控除することができます。

※令和4年1月1日以降に開始する事業年度分から適用できます。

優良な電子帳簿の要件についてはこちらの2ページ目をご参照ください。

③スキャナ保存制度の要件を緩和

スキャナ保存についての変更点は4つです。

  • a. タイムスタンプ要件の緩和
  • b. タイムスタンプの入力期限の統一
  • c. 適正事務処理要件の廃止
  • d. 検索方法の条件緩和

a. タイムスタンプ要件の緩和

従来:証憑となるデータにはタイムスタンプの付与を義務付け
→改正後:一定の要件を満たすシステムで保存すると、タイムスタンプを付与しなくてよい

一定の要件とは、証憑となる画像データの訂正や削除の履歴が残る(訂正または削除ができない)クラウドにおいて入力期間内に保存することです。

    ※タイムスタンプとは…

    タイムスタンプとは、「その時刻にこのデータが存在し、改ざんされていない証明となるもの」です。
    電子データにタイムスタンプを付与することで、容易に改ざんできるとみられがちな電子データの信頼性を高めることができます。

b. タイムスタンプの入力期限の統一

従来:3営業日以内に付与
→改正後:書類の受領から約2か月以内に入力

休日等をまたぐことを考慮し、7営業日以内のラグは許容されます。

c. 適正事務処理要件の廃止

従来:「適正事務処理要件」といった入力時の相互牽制や定期検査など社内規定の整備あり
→改正後:廃止 

これにより、一人でデータ化し原本廃棄することが可能となります。

d. 検索要件の条件緩和

従来:「日付または金額の範囲指定により検索できること」「二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること」といった条件
→改正後:「取引年月日」「取引金額」「取引先名称」の3項目に限定

国税庁等が電子データのダウンロードを求めた際に応じるのであれば、範囲指定や複数項目の組み合わせ検索は不要となります。

④電子取引データの保存の厳格化

※当初、令和4年1月1日からの適用でしたが、令和3年12月に、適用を2年猶予する旨が発表されました。
このため、令和5年12月31日までに行う電子取引については、引き続き紙に出力して保存しても差し支えないこととなりました。

書面保存の廃止

従来:電子データで受け取った電子取引の記録は、紙に出力して保存してもよい 
→改正後:電子データで受け取った電子取引の記録は、電子帳簿保存法の要件を満たしたうえで電子データにて保存しなければならない

これまでは書面による保存を容認していましたが、今回の改正では、令和4年1月1日以降()に行う電子取引データは書面による保存ができなくなります。

電子取引データの検索項目

従来:「日付または金額の範囲指定により検索できること」「二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること」といった条件
→改正後:「取引年月日」「取引金額」「取引先名称」の3項目に限定

スキャナ保存と同様に「取引年月日」「取引金額」「取引先名称」の最低3項目が条件となります。

検索にあたっては、日付や金額の範囲指定ができること、取引先名称も含め2項目以上での条件設定ができ、速やかに表示できることが重要です。

⑤罰則規定

要件を満たしていない場合

要件を満たした保存がされていなければ、税法上の保存義務がある帳簿書類として取り扱うことはできません。

しかし、「要件を満たしていないから消さなくてはいけない」ではなく、要件を満たしているものと同じように保存しておく必要があります。

罰則の新設 

スキャナ保存データや電子取引データに改ざん等を行い発覚した場合、改ざんで課される重加算税の額にプラスして「申告漏れの税額×10%」が加算されます。

アウル税理士法人でできること

電子帳簿保存法について、少しでもお分かりいただけたでしょうか。

内容が多岐にわたり、全体を理解するのが難しい話となっています。

今回の電子帳簿保存法の改正の中で、特に事業者が強制的な対応を迫られるものは「④電子データの保存の厳格化」でした。

今回、それは2年猶予されることとなりましたが、ペーパーレス化という大きな潮流は変わらず進むものと弊所では考えています。

さらに、猶予期間中に電子帳簿保存法自体の内容がまた変わる可能性もあると考えております。

そのため、アウル税理士法人では、昨年顧問先様に改正に関してのパンフレットを配布し注意喚起を行いました。

また、改正をめぐる動きがあれば、逐次ホームページブログやメルマガなどで情報提供をしていく方針でおります。

近年、税務をめぐる法令の改正は以前より頻繁に行われるようになっております。

適時に情報が手に入らないことに不安を感じ、税務顧問契約の見直しを考えていらっしゃる事業者様は、是非一度、弊所の無料相談にお申込みいただければと思います。

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