利益目標の数字に根拠はあるか?人を動かすのは利益の“意味付け”【失敗しない経営者思考】

利益目標の数字に根拠はあるか?人を動かすのは利益の“意味付け”【失敗しない経営者思考】

こんにちは。アウル税理士法人の代表社員税理士・佐藤 等(さとう ひとし)です。

経営者のみなさんにとって、「利益」とは何ですか?

「利益とは売上高と経費の差額だ」と答える人もいることでしょう。あるいは「会社を大きくするためのお金」と正直に考える人もいるかもしれません。

近代経済学では、企業の目的を「利益の最大化」と定義しますが、その発想では、実際に人を動かすことはできません。

利益に意味付けを行わなければ、「たくさん稼げればいい」「いま儲けられればいい」という刹那的な判断で誤った方向に舵を取ってしまう危険性もあります。

マイホーム・マイカー・子どもの教育費など、個人の貯蓄には何らかの“目的”があります。貯蓄とは、よりよい未来のために行われてゆくものです。

会社もまた同じこと。経営者は利益に意味付けを行い、夢のある将来を描いていく必要があります。

マネジメントの父であるドラッカーは、次のように言います。

『利益』が会計上の幻影にすぎないことは、いくら強調しても強調しすぎることがない。……中略……利益なるものは存在しない。存在するものは、事業継続のために繰り延べされえたコストにすぎない

『[新訳]乱気流時代の経営』

利益には経営者が知るべき3つの役割(意味)がある

利益には経営者が知るべき3つの役割(意味)がある

さてドラッカーは、利益の役割を次のように分類しました。

①事業活動の有効性と健全性を測定する
②陳腐化・更新・リスク・不確実性をカバーする
③事業のイノベーションと拡大に必要な資金調達を確実にする

②と③は、組織や事業の“未来”のために必要なものとして利益を定義しています。人と同じように、組織や事業も歳月を経て劣化したり、様々なリスクに直面したりします。利益はそうした不確実な未来のために備えておく重要な資金の調達源だというわけです。

このことから利益の内部留保とは、いわば組織や事業の未来を支える燃料タンクという点で正当とみなすことができます。

では①についてはどうでしょうか。

事業活動の有効性と健全性の測定――それはつまり、利益(燃料)の使い道の妥当性を判断することを意味しています。

  • 有効性➡事業が顧客の支持をどれくらい得ているか
  • 健全性➡事業に投下する資源分配が妥当であるか

有効性と健全性の測定がしっかりできていれば、「いま、必要な利益」を算出して「夢のある未来」を社員に示すことができます。

社員も納得できる「利益目標」は「将来への危機感」から生まれる

社員も納得できる「利益目標」は「将来への危機感」から生まれる

「事業活動の有効性と健全性の測定」のメリットは他にもあります。それは、「いま、必要な利益」について考えていく中で「いま、そこにある将来の危機」と向き合うことができる――というメリットです。

例えばドラッカーの著書『マネジメント』では、次のような言葉があります。

人口構造だけが、未来に関して唯一の予測可能な事象だ

『マネジメント』

このドラッカーの言葉を受けた南里英語教室を運営する「株式会社 NES」の代表・南里 洋一郎(なんり よういちろう)社長は、教室を展開する地域の人口動態の変化をみずから調査し、分析しました。

そこでわかったのは、「このマーケットはあと3年で約2割減少する」というショッキングな予測でした。

ただちに南里社長は、人口動態の安定した他地域への進出やそのための人材育成を計画し、実行していきます。

以前までは、「昨年対比で120%くらい売上達成できるといいよね」と漠然とした話しかしてこなかったという南里社長。そこには、「なぜ120%達成するのか」という意味付けがまったくなく、社員にはほとんど響かなかったといいます。

だからこそ南里社長は、人口動態変化の分析調査を通じて「いま、そこにある将来の危機」を明確にし、他地域へ進出する理由や、そのために稼がなければならない利益額を社員と共有したのです。

おわりに

組織や事業のよりよい未来をつくるために、「いま、必要な利益」を明確にして社員と共有すること。それが、持続可能な組織として成長するための大きなカギとなります。

今回の内容が、少しでも経営者のみなさんのお役に立てれば幸いです。

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