こんにちは。アウル税理士法人の代表社員税理士・佐藤 等(さとう ひとし)です。
今回のテーマは、事業の定義。
事業経営では、様々な場面で決断を迫られることがあります。首尾一貫した選択を下し続けるためには、揺るがないものを保持しなければなりません。
その揺るがないものこそ、事業の定義――「われわれの事業は何か」という問い――というわけなのです。
何をミッション(使命)として活動しているのか。他にはない自社の強みは何なのか。これらの問いに対する答えが明確でなければ、事業における意思決定が揺らいだり、自社の強みを活かせないまま貴重な経営資源を多方にばらまいて無駄にしたりする羽目になってしまいます。
マネジメントの父であるドラッカーは次のように言います。
事業の定義は、集中を強いるものでなければならない。卓越性を獲得すべき知識を特定し、リーダーシップを獲得すべき市場を特定しなければならない
『創造する経営者』
では実際にどうすれば事業の定義を明確にすることができるのでしょうか。以下ではその方法・視点について3つお伝えします。
事業の定義に必要な3要素
- ミッション(使命)を明確にする
- 顧客の支持が得られる市場を探して絞り込む
- 自社の強み(卓越性)を見出す
ミッション(使命)を明確にする
まずは「何のために事業を行うのか」というミッション(使命)を改めて明確にしましょう。
ミッションからスタートしなければならない。ミッションこそ重要である。組織として人として、何をもって憶えられたいか
ドラッカー『非営利組織の経営』
▶︎関連記事:
【社員のモチベーションが上る方法】経営者と従業員が会社の使命を共有しなければ上手くいかない【失敗しない経営者思考】
実は多くの経営者が、ミッション(使命)をないがしろにしがちです。ミッションは目的であり、事業はその目的を実現する手段です。したがって目的が不鮮明だったり、経営理念(目的)が形骸化したりすると組織の方向性が曖昧になり、それによって主体性のない“指示待ち人間”の社員が質の低い仕事を顧客に提供することになってしまいます。
まずは事業のミッション(使命)を明確に――決して簡単ではありませんが、経営者が苦労してでもつくらなければならないものです。
顧客の支持が得られる市場を探して絞り込む
次に、自社を取り巻いている経営環境に目を向け、これから集中していくべき領域を決めていくことが重要です。
ポイントは、顧客の支持を集めている市場。自社のどんな事業が顧客の支持や評価を得ているのかについてよく分析する必要があります。先に引用したドラッカーの「リーダーシップを獲得すべき市場」とはつまりそういう意味です。リピート率(安定性)や利益率といった数字がヒントになるでしょう。すべては経営資源の集中と事業活動の廃棄を決定するためです。
重要なことは、いかに適切に仕事を行うかではなく、いかになすべき仕事を見つけ、いかに資源と活動を集中するかである
『創造する経営者』
より強み(卓越性)を活かせる市場で活躍するためには、時として複数抱えている事業のいくつかを廃棄し、強みを生かせる特定の事業に経営資源を集中させていかねばなりません。
もちろん事業活動の廃棄は、経営者に課せられた重要な意思決定です。だからこそ、筋の通った揺るがない足場としてミッション(使命)が欠かせないのです。
自社の強み(卓越性)を見出す
最後に、他にはない自社の強みとは何であるかを見出しましょう。
顧客の支持や評価を集めているのは、自社のどんなところなのか。社員のどのような知識やノウハウが顧客の満足度を高めているのかについて、しっかりと向き合うのです。
そこに必ず、自社の強み(卓越性)があるはずです。自社の強み(卓越性)とは何なのかを明確にし、社員と共有し、意識して磨き上げれば、成果に結びくとともに働く人たち自身の誇りにもなります。
おわりに
事業の定義は、事業のマネジメントの根本です。
あなたの事業はどんな事業で、何のために行っているのですか?
ミッション(使命)・市場・強み。これら3つの要素があって初めて事業の定義が成り立ちます。
今回の内容が、少しでも経営者のみなさんのお役に立てれば幸いです。
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