「利益という資産の作り方」(利益づくり)の話 第1回

「利益という資産」…職業会計人としてあるまじき、奇妙な表現をしてしまいました。

売上高―費用=利益

「会計」における基本中の基本原理です。

決算書(損益計算書)で最終行にあるためボトム・ラインと呼ばれるように、ある意味、利益を求めることは会計という活動の最終目的ともいえます。

だからという訳ではないと思うのですが、事業者の目的を「利益をあげることである」と誤解している方が多いと感じられます(誤解の理由は他にもあります)。

さて、あえて「利益という資産」と述べたのは、利益は単なる計算結果ではなく、何かを生み出す力があるという意味を込めたからです。

新たな資本は、生産と消費の差から捻出するほかにない。その差が利益である。(中略)利益だけが資本たりうる。
『企業とは何か』

生産―消費=利益という訳ですが、表現したいことは、上記、売上高―費用=利益と同じです。

ここで重要なのは、ドラッカー教授の、「利益だけが資本たりうる」という言葉です。マネジメントにおいては、この「資本」という言葉に力点が置かれています。なぜか。

企業にとって第一の責任は、存続することである。換言するならば、企業経済学の指導原理は利益の最大化ではない。損失の回避である。したがって企業は、事業に伴うリスクに備えるために、プレミアムを生み出さなければならない。リスクに対するプレミアムの源泉は一つしかない。利益である。
『現代の経営』

「資本」に力点があるのは、企業の責任は社会に存続することにあるからです。

さらに…なぜか。

企業は社会の道具であり、社会において特定の役割を負っているからです。その役割のことを目的、使命(ミッション)といいます(この点は別の機会でお話します)。

つまり企業は、ミッションの実現という社会的な役割を果たし続けるために資本は必要なのです。ここに資本とは、過去の利益の累積によるものであることがわかります。

ドラッカー教授のいう「利益」とは、会計的には利益剰余金、いわゆる内部留保金のことを指しています。この金額を増やす唯一の方法は、法人税等の課税後の当期純利益を積み上げていく以外にはないのです。このことから私たちの事務所では、過度な節税を進めることなく、むしろ課税後の利益の累積額である利益剰余金を増やすためにマネジメントを学ぶことをおすすめしています。

こうしたことからドラッカー教授は、事業体が利益をあげることを目的ではなく「存続の条件」であると位置づけます。このことは、とても重要です。目的が変われば人の姿勢や行動が変わるからです。具体的にいうと利益をあげることが目的であると誤解している経営幹部の言動が社員に誤ったメッセージを発し、その結果として誤った行動をとらせる可能性があるということです。世の中で起こっているコンプライアンス違反の遠因の一つであると感じます。

利益剰余金、内部留保金は、企業が社会において役割を果たし続け、未来を作るための燃料庫のようなものです。あなたの会社の燃料庫には、未来で活動するための燃料がどれくらい蓄積されていますか?

【参考】
『実践するドラッカー[利益とは何か]』第1章

『ドラッカーを読んだら会社が変わった』物語10

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