税理士なしで法人決算を行う方法|初心者向け完全ガイド

「税理士に頼むと費用がかかるし、自分で法人決算ができれば…」そう考えている経営者の方、必見です!実は、正しい知識と準備があれば、税理士なしでも法人決算は可能です。

ただし、時間と手間はかかるため、「本業に集中できない」という最大のデメリットがあります。

この記事では、法人決算を自分で行うメリット・デメリット、具体的な手順、必要な書類を詳しく解説。さらに、税理士に依頼した方が良いケースも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

税理士なしで法人決算は可能?メリット・デメリット

法人税の申告は、企業の経営者にとって避けて通れない重要な業務の一つです。

通常、この複雑な業務は税理士に依頼することが一般的ですが、税理士に依頼せずに自社で申告を行う企業もいます。

ただし税理士なしでの法人税申告は、メリットとデメリットを十分に理解し、慎重に検討する必要があります。

税理士なしで法人税を申告するメリット:コスト削減から経営の可視化まで

税理士に依頼せずに法人税を申告することには、以下のようなメリットがあります。

①コスト削減

最も大きなメリットは、税理士への報酬を支払う必要がないため、大幅なコスト削減が期待できる点です。特に、中小企業やスタートアップ企業など、予算に制約のある企業にとっては、このコスト削減は非常に魅力的です。

②知識と経験

法人税の申告や日々の記帳業務を自社で行うことで、会計や税務に関する実践的な知識が身につきます。これにより、経営者は自社の財務状況をより深く理解し、経営判断に役立てることができます。

③経営状況の可視化と自己管理能力の向上

自社の財務状況や税務処理を自ら管理することで、経営者は会社の状況をより正確に把握し、経営に対する責任感を高めることができます。

税理士なしで法人税を申告するデメリット:リスクと責任の増大

一方で、税理士なしで法人税を申告することには、以下のようなデメリットも存在します。

①専門知識の不足によるリスク

法人税法や税務申告の手続きは非常に複雑であり、専門的な知識が必要です。知識不足による申告漏れや誤りは、追徴課税や罰則のリスクを高めます。

②時間と労力の負担増

法人税の申告や日々の記帳業務は、時間と労力がかかる作業です。これらの業務を自社で行う場合、従業員の負担が増加し、本来の業務に支障をきたす可能性があります。

③税務リスクの把握困難

税務申告には様々なリスクが伴いますが、専門家のアドバイスがない場合、これらのリスクを適切に把握し、対応することが困難になります。

④法令改正への対応遅延

税法は頻繁に改正されるため、常に最新の情報を把握しておく必要があります。税理士はこれらの情報に精通していますが、自社で対応する場合、情報収集や対応が遅れる可能性があります。

⑤全責任を負う必要性

税理士に依頼した場合、税務申告に関する責任は税理士にも及びますが、自社で申告を行う場合、全ての責任を自社で負う必要があります。

税理士なしで法人決算を行う流れと必要な書類

ステップ1:帳票整理 – ミスを防ぐための第一歩

決算作業の最初のステップは、領収書、請求書、契約書など、日々の取引を示す帳票類の整理です。これらの書類は会計処理の根拠となるため、正確な整理が不可欠です。

【ポイント】

  • 日頃から定期的に整理し、年度末にまとめて行う負担を軽減しましょう。
  • 書類は日付順や取引先別など、管理しやすい方法で整理します。
  • 電子帳簿保存法の要件に従い、電子データで受け取った書類は適切に保存しましょう。

ステップ2:データ入力 – 正確な記帳が正確な決算書類につながる

整理した帳票をもとに、会計ソフト等に取引データを入力し、仕訳帳や総勘定元帳を作成します。このプロセスは、決算書類の正確性を左右する重要な作業です。

【ポイント】

  • 入力漏れやミスを防ぐため、帳票とデータを照合しながら丁寧に入力しましょう。
  • 会計ソフトの自動仕訳機能を活用すると、効率的に作業を進められます。
  • 定期的に帳簿のバックアップを取り、データ消失に備えましょう。

ステップ3:試算表の作成 – 記帳の正確性をチェック

記帳が完了したら、試算表を作成して記帳内容の正確性を確認します。試算表は、借方と貸方の合計が一致しているかを検証するための集計表です。

【ポイント】

  • 試算表の借方と貸方の合計が一致しない場合は、記帳ミスがないか確認しましょう。
  • 会計ソフトの試算表作成機能を利用すると、簡単に作成できます。

ステップ4:決算整理 – 期間損益計算を適切に行う

事業年度をまたぐ取引や、減価償却費、引当金など、決算特有の処理を行います。これを決算整理仕訳と呼びます。また、在庫の確認(実地棚卸)も行い、帳簿との差異がないかを確認します。

【ポイント】

  • 決算整理仕訳は、税法の規定に従って適切に行いましょう。
  • 実地棚卸は、正確な売上原価の計算に不可欠です。
  • 固定資産の減価償却費は、税法で定められた方法で計算します。

ステップ5:決算書類の作成 – 会社の経営成績をまとめる

確定した帳簿データをもとに、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書などの決算書類を作成します。これらの書類は、会社の経営成績や財政状態を示す重要な資料です。

【ポイント】

  • 決算書類は、会社法や税法の規定に従って作成します。
  • 会計ソフトの決算書作成機能を利用すると、効率的に作成できます。
  • 作成した決算書類は、複数回チェックしてミスがないか確認しましょう。

ステップ6:取締役会・株主総会での承認 – 会社の正式な記録とする

作成した決算書類は、会社法で定められた機関(株式会社の場合は取締役会と株主総会)の承認を受ける必要があります。

【ポイント】

  • 取締役会と株主総会の開催日程は、早めに確定させましょう。
  • 株主への招集通知の送付や、委任状の受領など、必要な手続きを漏れなく行いましょう。

ステップ7:各種税金の申告・納税 – 期限内に正確に

法人税、消費税、法人事業税、法人住民税などの税金を計算し、申告・納税を行います。申告期限と納税期限は、原則として事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。

【ポイント】

  • 税法の改正に注意し、最新の情報を確認しましょう。
  • e-Taxを利用すると、オンラインで申告・納税が可能です。
  • 税務署や税理士に相談し、適切な申告・納税を行いましょう。

ステップ8:決算書の保存 – 法定期間の保管義務

作成した決算書類や申告書類は、会社法や税法で定められた期間、保存する必要があります。

【ポイント】

  • 会社法では原則10年間、税法では原則7年間の保存義務があります。
  • 電子帳簿保存法の要件に従い、電子データで受け取った書類は適切に保存しましょう。

決算に必要な書類一覧

法人決算に必要な書類は、大きく分けて「決算書類」と「税務申告書類」の2種類があります。

①決算書類

決算書類は、会社の経営成績や財政状態を示すための書類です。主な書類は以下の通りです。

貸借対照表会社の財政状態(資産、負債、純資産)を示す書類です。
損益計算書会社の経営成績(売上、費用、利益)を示す書類です。
株主資本等変動計算書株主資本の変動状況を示す書類です。
個別注記表決算書類の内容を補足する書類です。
販売費及び一般管理費の明細販売費と一般管理費の内訳を示す書類です。

②税務申告書類

税務申告書類は、税務署に提出する書類です。主な書類は以下の通りです。

法人税申告書法人税の計算結果を申告する書類です。
法人事業税申告書法人事業税の計算結果を申告する書類です。
法人住民税申告書法人住民税の計算結果を申告する書類です。
勘定科目内訳明細書勘定科目ごとの内訳を示す書類です。
法人事業概況説明書会社の事業内容や経営状況を説明する書類です。
消費税申告書消費税の計算結果を申告する書類です。(免税事業者を除く)

法人税申告の作成・提出

法人税申告書は、法人が事業年度の所得に基づいて納めるべき法人税額を税務署に申告するための重要な書類です。個人が所得税を納めるように、法人も所得に応じて法人税を納める義務があります。

①法人税の対象となる所得

法人税の課税対象となる所得は、益金から損金を差し引いた金額です。

  • 【益金】売上収入、資産売却収入、無償取引による収益など
  • 【損金】売上原価、販売費、災害による損失などの費用や損失

②法人税の申告納税方式

法人税は、納税者自身が税額を計算し、申告・納付する申告納税方式を採用しています。各法人は、定款で定められた事業年度ごとに法人税額を計算し、期限内に確定申告を行う必要があります。

③法人税の対象となる法人

法人税の課税対象となるのは、株式会社、合同会社、協同組合、一般社団法人、NPO法人など、幅広い種類の法人です。

法人税申告書は、「別表一」から「別表二十」までの書類で構成されており、別表一は「確定申告書」、それ以外の別表は「明細書」として扱われます。書類の種類は100種類以上に及びますが、すべての企業が全種類の書類を提出する必要はなく、提出書類は企業の決算内容によって異なります。

【主な別表】

  • 別表一:確定申告書
  • 別表二:同族会社の判定に関する明細書
  • 別表四:所得の金額の計算に関する明細書
  • 別表五(一):利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書
  • 別表五(二):租税公課の納付状況等に関する明細書

④法人税申告書の作成手順

  1. 記帳:日々の取引を正確に記帳し、帳簿と実際の残高を照合します。
  2. 財務諸表の作成:貸借対照表、損益計算書などの財務諸表を作成します。
  3. 明細書(別表)の作成:財務諸表の内容をもとに、減価償却費、交際費などの個別項目に関する明細書を作成します。
  4. 前期申告書の転記:前期の法人税申告書から、必要な項目を転記します。
  5. 所得金額の確定:「別表四」の金額をもとに加算・減算を行い、所得金額を確定させます。
  6. 申告書の作成:各明細書で算出した金額を「別表一」にまとめ、納めるべき法人税額を確定させます。

⑤法人税申告書の提出方法と期限

  • 提出先……納税地を所轄する税務署
  • 提出方法……税務署窓口への持参、郵送、e-Taxによる申告
  • 提出期限……事業年度終了日の翌日から2か月以内

期限内に申告できなかった場合は、速やかに申告を行いましょう。期限後の申告は、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性があります。

法人決算はやはりプロに依頼したほうがいい!

  • 決算業務に時間をかけられない
  • 税務や会計に関する知識に自信がない
  • 節税対策をしっかり行いたい
  • 税務調査への対応に不安がある
  • 会社の規模が大きい、または複雑な取引が多い

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