
クリニック開業を検討されている先生方にとって、税務や資金計画は大きな不安要素ではないでしょうか。「税理士は本当に必要なのか」「個人開業と医療法人、どちらが得なのか」「資金計画はどう立てれば良いのか」など、疑問や悩みを抱えている方も多いはずです。
この記事では、クリニック開業における税理士の必要性から、開業前後のサポート内容、税務手続き、個人開業と医療法人の比較、資金計画、そして税理士の選び方まで、網羅的に解説します。税理士に依頼することで、税務・会計の専門知識を活用し、煩雑な手続きや税務リスクから解放され、安心して診療に専念できる環境を整えることができます。
また、資金調達や事業計画の作成支援、節税対策など、税理士は開業医にとって強力なパートナーとなります。この記事を参考に、先生にとって最適な開業準備を進め、クリニック経営を成功に導きましょう。
クリニック開業に税理士は必要?その役割とは
クリニック開業は、医師にとっては憧れであると同時に、多くの不安や悩みを抱えるものです。税理士は、税務・会計の専門家として、これらの悩みを解消し、開業を成功に導くための強力なパートナーとなります。
1、開業前に税理士に依頼できるサポート
開業前は、資金調達、事業計画、各種手続きなど、多岐にわたる準備が必要です。税理士は、これらの準備をスムーズに進めるためのサポートを提供します。
①事業計画の作成支援
よくある悩み | 資金計画や収支予測が難しい。 |
サポート | 税理士は、医療業界の経営状況や税務に関する知識に基づいて、現実的かつ詳細な事業計画の作成を支援します。金融機関からの融資を受ける際にも、説得力のある事業計画は不可欠です。 |
②資金調達に関するアドバイス
よくある悩み | 融資を受けられるか不安、どの融資制度が良いかわからない。 |
サポート | 税理士は、金融機関との交渉をサポートし、有利な条件で融資を受けるためのアドバイスを提供します。また、各種補助金や助成金に関する情報も提供し、資金調達の選択肢を広げます。 |
③税務署等への各種届出
よくある悩み | どのような書類が必要で、いつまでに提出すれば良いかわからない。 |
サポート | 税理士は、税務署や都道府県への各種届出書類の作成・提出を代行します。これにより、煩雑な手続きから解放され、開業準備に専念できます。 |
2、開業後に税理士に依頼できるサポート
①日々の会計処理
よくある悩み | 会計ソフトの導入や記帳が難しい、日々の業務で忙しく会計処理に手が回らない。 |
サポート | 税理士は、会計ソフトの導入支援や記帳代行を行い、正確な会計処理をサポートします。これにより、経営状況を常に把握し、適切な経営判断を行うことができます。 |
②税務申告
よくある悩み | 複雑な税法を理解し、正確な税務申告を行う自信がない。 |
サポート | 税理士は、税務申告書の作成・提出を代行し、税務調査にも対応します。これにより、税務に関するリスクを最小限に抑え、安心して経営に専念できます。 |
③経営に関するアドバイス
よくある悩み | 経営状況を分析し、改善策を見つけたい、経営に関する相談相手が欲しい。 |
サポート | 税理士は、会計データや経営状況を分析し、経営改善のための具体的なアドバイスを提供します。また、経営に関する相談にも応じ、医師の良き相談相手となります。 |
クリニック開業時に必要な税務手続き
クリニック開業の手続きは、煩雑で多岐にわたります。特に税務関係の手続きは、専門的な知識が必要となるため、事前にしっかりと準備しておくことが大切です。
主に以下が挙げられます。
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
- 診療所開設届(医療法に基づく診療所開設届)
- 保険医療機関指定申請書
これらの手続きは、それぞれ提出先や提出期限が異なるため、注意が必要です。
①開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
クリニックに限らず、個人事業主が事業を開始する際に、税務署へ提出する書類です。
税務署は、納税地を管轄する税務署に提出します。
副業として自宅で仕事をする場合や、複数の非常勤勤務をする場合の開業届は、納税地に自宅の住所・電話番号を記入します。
提出期限 | 事業開始から1ヶ月以内 |
提出先 | 納税地を管轄する税務署 |
提出方法 | 税務署に持参、郵送、e-Tax |
②診療所開設届(医療法に基づく診療所開設届)
医療法に基づき、診療所を開設する際に、保健所へ提出する書類です。
提出期限 | 開設後10日以内 |
提出先 | 診療所の所在地を管轄する保健所 |
提出方法 | 保健所に持参 |
③保険医療機関指定申請書
保険診療を行うために、厚生局へ提出する書類です。
提出期限 | 診療所開設届が受理された後 |
提出先 | 診療所の所在地を管轄する厚生局 |
提出方法 | 厚生局に持参、郵送 |
④その他必要な手続き
上記以外にも、以下のような手続きが必要となる場合があります。
- 所得税の青色申告承認申請書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- 消費税課税事業者選択届出書
個人開業と医療法人、どちらが得?
クリニック開業にあたり、個人開業と医療法人のどちらが得かは、一概には言えません。それぞれの形態にはメリット・デメリットがあり、医師の状況や考え方によって最適な選択は異なります。
個人開業のメリット・デメリット
【メリット】
開業手続きが比較的容易 | 医療法人設立に比べ、手続きが少なく、費用も抑えられます。 |
経営の自由度が高い | 意思決定を迅速に行え、柔軟な経営が可能です。 |
利益を自由に使える | 事業で得た利益を、個人の裁量で自由に使うことができます。 |
【デメリット】
税負担が大きい場合がある | 所得が増えるほど税率が高くなる累進課税制度のため、高所得の場合、医療法人より税負担が大きくなることがあります。 |
社会的信用度 | 医療法人に比べ、金融機関からの融資や不動産賃貸契約などで不利になることがあります。 |
事業承継の難易度 | 相続時に、個人の財産として相続税が課されるため、事業承継が複雑になることがあります。 |
医療法人のメリット・デメリット
【メリット】
節税効果が高い | 法人税率は所得税率より低く、役員報酬を経費計上できるなど、節税の選択肢が広がります。 |
社会的信用度 | 金融機関からの融資を受けやすく、不動産賃貸契約なども有利に進められることがあります。 |
事業承継が容易 | 相続税対策を行いやすく、事業承継もスムーズに進められます。 |
【デメリット】
設立・運営コストが高い | 設立手続きが煩雑で、設立後も会計処理や税務申告などの事務負担が増えます。 |
利益の使い道に制限 | 法人の利益は、医療法人の目的以外には使用できません。 |
経営の自由度が低い | 意思決定に時間がかかり、柔軟な経営が難しい場合があります。 |
どちらを選ぶべきか?
高所得が見込まれる場合や、事業承継を予定している場合は、医療法人の方が有利になる可能性が高いです。
開業手続きや運営コストを抑えたい場合や、経営の自由度を重視する場合は、個人開業の方が適しているかもしれません。
いずれの形態を選ぶにしても、税務や会計に関する専門的な知識が必要となるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家は、個々の状況に合わせて、最適な形態の選択や開業準備をサポートしてくれます。
クリニック開業の資金計画
①開業資金の目安
クリニックの規模や診療科目によって異なりますが、一般的には以下の費用がかかります。
物件取得費 | 不動産の購入費や賃貸契約の初期費用 |
内装・外装工事費 | 待合室、診察室、処置室などの工事費用 |
医療機器・什器備品費 | 診察に必要な医療機器や家具、事務用品などの購入費用 |
広告宣伝費 | ホームページ作成、広告掲載、内覧会開催などの費用 |
人件費 | 開業当初のスタッフの給与 |
運転資金 | 開業後の運営に必要な費用(家賃、光熱費、消耗品費など) |
②資金調達の方法
自己資金だけでなく、以下の方法で資金調達を検討しましょう。
金融機関からの融資 | 銀行や信用金庫などからの融資 |
日本政策金融公庫 | 新規開業医向けの融資制度 |
補助金・助成金 | 国や地方自治体の制度を活用 |
親族・知人からの借入 | 利子や返済条件を明確にしておく |
③経費に計上できるもの
賢く税務を行うために、経費計上できるものを把握しておきましょう。
人件費 | 従業員の給与、賞与、社会保険料など |
賃借料 | クリニックの家賃、駐車場代など |
医療機器・什器備品費 | 購入費、リース料、修理費など |
広告宣伝費 | ホームページ作成費、広告掲載費、内覧会費用など |
消耗品費 | 診察に必要な医療材料、事務用品など |
通信費 | 電話代、インターネット利用料、郵便代など |
水道光熱費 | 電気代、ガス代、水道代など |
租税公課 | 固定資産税、自動車税、事業税など |
損害保険料 | 火災保険、賠償責任保険など |
修繕費 | クリニックの修繕費用 |
専門家への報酬 | 税理士、弁護士、コンサルタントなどへの報酬 |
接待交際費 | 取引先との会食費、贈答品費など |
福利厚生費 | 従業員の健康診断費用、忘年会費用など |
減価償却費 | 医療機器や什器備品の購入費用を分割して計上 |
開業医と伴走する税の専門家「税理士」
税務の専門家である税理士は、税金に関するあらゆる業務を法的に取り扱うことができるため、複雑な税務処理や申告のミスを避けたい場合に欠かせない存在です。
税理士に依頼することで、次のようなメリットがあります。
①税理士は税務に関する専門知識を持っている
税理士は、税務に関する法律や規制に精通しており、適切な申告を行うための専門知識を持っています。
税金計算のミスを防ぎ、税務調査が入るリスクを最小限に抑えるためには、税理士のサポートが重要です。また、税理士は最新の税法や減税措置を把握しているため、納税者の立場で考えた場合、最大限のメリットを得ることができます。
②税務調査やトラブルにも対応できる
確定申告後に税務署からの調査が入ることがありますが、税理士はその対応を代行することができます。
税務務調査が行われる際には、申告内容や書類の確認が行われるため、専門的な知識が求められます。税理士に依頼しておけば、こうした状況にも冷静に対応できるので、安心して任せることができます。
③税理士に依頼することで時間と手間を省ける
税務処理や申告書の作成は非常に時間がかかる作業です。特に、事業者や個人事業主の場合、日々の業務に追われる中で、正確な経理を行い、申告期限に間に合わせることは大きな負担となります。
税理士に依頼すれば、税務作業を一手に引き受けてくれるため、他の重要な業務に集中することができます。
税理士の選び方
税理士選びは、クリニックの経営を左右する重要な決断です。ここでは、後悔しない税理士選びのポイントを解説します。
①医療業界に強い税理士を選ぶ
- 医療業界特有の税務・会計に精通しているか
- 医療業界の最新情報に詳しいか
- 医療業界での実績が豊富か
②コミュニケーション能力が高い税理士を選ぶ
- 相談しやすい雰囲気があるか
- 専門用語を分かりやすく説明してくれるか
- レスポンスが早いか
③経営に関するアドバイスもしてくれる税理士を選ぶ
税務・会計以外にも、経営戦略や資金調達などの知識も豊富か
経営状況の分析や改善提案をしてくれるか
集患・増患対策のアドバイスをしてくれるか
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