合同会社から株式会社に組織変更するメリット・デメリットと変更の流れを解説

合同会社から株式会社へ組織変更を検討する際、事業拡大や社会的信用の向上が期待できる一方で、手続きに伴うデメリットや税務上の注意点を把握しておくことが重要です。

この記事では、組織変更に伴う具体的なデメリットや税務上のリスクを解説し、さらにメリットや手続きの流れについても詳しく説明します。

合同会社から株式会社に組織変更するデメリット

合同会社から株式会社への組織変更を考える上で、次のようなデメリットには注意が必要です。

決算公告義務が発生する

合同会社から株式会社に移行すると、決算公告の義務が新たに発生します。

これは、株式会社が資本金や利益などの財務情報を広く公開する必要があるため、法的規制によって定められているものです。

決算公告は、官報や新聞などに掲載され、一般に公開されます。そのため、企業の財務状況が外部に知られることになり、競合他社や顧客からの注目を集める可能性があります。

また、決算公告には費用が発生するため、コスト面での負担も増加します。決算公告義務は、株式会社の透明性を高め、投資家や取引先からの信頼を獲得するために重要な役割を果たしますが、同時に企業の財務情報を公開することによるリスクも伴います。

定期的に役員登記をする必要がある

合同会社では、社員の任期を設定する必要がないため、社員が加入や脱退しない限り、重任登記を行う必要がありません。

一方で株式会社の場合、役員の任期は最長で10年と決まっているため、少なくとも10年に一度は役員の重任登記をする決まりとなっています。これには費用がかかるだけでなく、事務作業の負担も増加してしまいます。

組織変更に伴い費用が発生する

合同会社から株式会社への組織変更には、登記費用、官報公告への掲載料、税理士への報酬など、さまざまな費用が発生します。

登記費用は、登記申請時に法務局に支払う費用です。合同会社解散登記として3万円、株式会社設立登記の登録免許税として3万円を支払う必要があります。

官報公告への掲載料は、3.5〜4万円程度が必要となります。

税理士費用は、組織変更に伴う税務処理や申告を依頼する場合に発生するもので、依頼する業務の内容によって変動しますが、一般的に数万円〜10万円程度が報酬としてかかります。

これらの費用は、組織変更を行う上で避けることができないため、事前に予算を立てておく必要があります。

合同会社から株式会社に組織変更する税務上の注意点

合同会社から株式会社への移行は、税務上の扱いが大きく変わるため、適切な対策を講じることが重要です。

例えば、移行時に発生する税金や、移行後の税務申告など、税務上の課題は多岐にわたります。

移行前に税理士などの専門家に相談し、適切な税務処理を行うことで、予期せぬ税負担を回避することができます。また、移行後の税務申告についても、税理士に依頼することで、正確な申告を行い、税務上のトラブルを防止することができます。

資産・負債の移転手続き

合同会社から株式会社への移行時には、資産や負債を合同会社から株式会社に移転する必要があります。

この移転手続きは、税務上の処理が複雑になるため、専門家のサポートが必要となる場合があります。また、移転する資産や負債の評価方法についても、税務上のルールに従って行う必要があります。移転手続きを適切に行わないと、税務上のペナルティが発生する可能性があるため、注意が必要です。

組織変更後の税務申告

合同会社から株式会社に移行した後も、税務申告の義務は継続されます。

移行後の法人税申告や消費税の課税期間の継続など、税務上の対応が求められるため、注意が必要です。

特に、移行前の合同会社の税務申告と、移行後の株式会社の税務申告を連携させる必要があります。税務申告のミスは、税務上のペナルティにつながる可能性があるため、税理士などの専門家に相談し、適切な対応を行うことが重要です。

合同会社から株式会社に組織変更するメリット

合同会社から株式会社に組織変更することには、主に次のようなメリットがあります。

社会的信用度が高まる

株式会社は、合同会社に比べて社会的信用度が高いとされています。これは、株式会社が資本金や利益などの財務情報を公開する義務があり、その情報が一般に公開されるため、企業の透明性が高く、信頼性が高いと見なされるからです。

また、株式会社は、役員などの責任者が明確に定められており、企業の責任体制が明確であることも、社会的信用度を高める要因の一つです。社会的信用度が高いことは、取引先や顧客からの信頼を獲得し、ビジネスを円滑に進める上で大きなメリットとなります。

資金調達がしやすくなる

株式会社は、株式を発行することで、外部からの資金調達を行うことができます。

これは、企業の成長や事業拡大のために必要な資金を調達する上で、非常に有効な手段です。

株式発行は、銀行からの借入金に比べて、金利負担が少なく、資金調達の柔軟性が高いというメリットがあります。また、株式を発行することで、多くの投資家から資金を集めることができ、企業の成長を加速させることができます。

合同会社から株式会社に組織変更する流れ

合同会社から株式会社に組織変更する場合、主に次の流れで手続きを進めていきます。

組織変更計画の策定

合同会社から株式会社への移行は、複雑な手続きを伴うため、事前に組織変更計画を策定することが重要です。

組織変更計画を策定することで、移行全体の流れを把握し、スムーズな移行を進めることができます。

組織変更計画には、主に以下のような項目を記載します。

  • 事業内容
  • 会社名(商号)
  • 本店所在地
  • 発行可能株式総数
  • 定款
  • 取締役氏名
  • 株式会社変更後の発行株式数
  • 合同会社の社員役職割り当て
  • 効力発生日

総社員の同意を得る

合同会社から株式会社への移行は、社員の権利や義務が変わるため、全ての社員から同意を得ることが必要です。

社員の同意を得るためには、組織変更の内容を説明し、理解を得ることが求められます。そのため、社員の意見を聞き取り、可能な範囲で反映させることで、社員の納得感を高めることが重要となります。

債権者保護の手続き

合同会社から株式会社への移行は、債権者の権利に影響を与える可能性があるため、債権者に対して組織変更の通知を行い、異議を申し立てる権利を保障する必要があります。

債権者保護の手続きを怠ると、法的リスクが生じる可能性があるため、注意が必要です。

組織変更の効力発生

債権者保護手続きが行われ、定められた期間内に債権者から異議申し立てがなかった場合、債権者が組織変更に承認したとみなされます。

これにより、組織変更計画で設定された「効力発生日」に、合同会社は株式会社へと正式に移行します。

株式会社の登記申請

合同会社から株式会社への組織変更が効力を発した後、必要な書類を準備して、速やかに登記申請を行う必要があります。具体的には、効力発生日から2週間以内に「合同会社の解散登記」と「株式会社の設立登記」を完了させなければなりません。さらに、この解散登記と設立登記は同時に行うことが求められています。

株式会社の登記申請には、主に次のような書類を準備する必要があります。

  • 組織変更計画書
  • 株式会社の定款
  • 全ての有限責任社員の同意書
  • 債権者保護手続関係の書類
  • 株式会社の役員の就任承認書
  • 株式会社の役員の本人確認証明書

まとめ

合同会社から株式会社への移行には、決算公告義務の発生、役員の登記義務の増加、組織変更に伴う費用など、さまざまなデメリットがあります。

ただし、これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、リスクを最小化することができます。例えば、税務上の課題については、税理士などの専門家に相談し、適切な税務処理を行うことで、予期せぬ税負担を回避することができます。

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