家族経営に関するご相談は、私たちアウル税理士法人にも多く寄せられます。
そこで今回は、経営についても寄り添うことに力を入れているアウル税理士法人が、家族経営について解説します。
この記事を読めば家族経営の全体像だけでなく、具体的にどういった行動をすべきか、成功するためのポイントはどこにあるかを知ることができますので、家族経営の予定がある経営者の方必見です。
まずは家族経営の定義から見ていきましょう。
家族経営とは、親族が所有・経営する会社のこと
そもそも家族経営とは、会社の創業者とその家族や身内が経営している会社のことを言います。家族経営は、「同族経営」「同族企業」「ファミリービジネス」などといった言葉で表現されることも多いです。
基本的には経営陣の苗字が創業者と同じであることが多いため、経営陣の中に同じ苗字の人が複数名いる場合は家族経営を行っている会社の可能性が高いです。なお、日本で家族経営を取り入れているのは、小規模企業や中小企業が多い現状です。
家族経営を行う3つのメリット
具体的に家族経営のメリットには、どんなものがあるのでしょうか。ここでは、家族経営を行う上でのメリットをご紹介します。
1.経営理念などが社内で浸透しやすい
経営陣が家族や身内で固められているため、会社の経営理念などが浸透しやすいというメリットがあります。家族や身内であれば、全くの他人よりも一緒にいる時間が長いので話し合う機会も増え、お互いの考え方を理解しやすくなるからです。
また、経営陣が経営理念をよく理解しているということは、身内以外の従業員たちにも良い影響を与えます。同時に、経営方針にも一貫性を持たせることができるでしょう。
2.意思決定のスピードが速くなる
例えば、経営陣と株主が別になっている企業の場合、何か大きなことを決断するときに先に株主側の意見を聞かなければなりません。
その点、家族経営の会社の場合は経営陣と株主は一体化しているのが特徴です。これにより、いちいち株主側の意見を取り入れたりする必要がなくなるため、意思決定のスピードを早くさせられるというメリットがあります。
3.長期的な経営戦略を練ることができる
経営陣と株主が一緒だと、何十年にも渡っての経営戦略を立てることができます。創業者の子の代、孫の代と世代を超えた経営ができるため、目先の利益にとらわれることもないからです。
このような理由から、10年、20年先の未来を見据えた長期的な経営戦略を立てられるのが家族経営のメリットと言えます。
家族経営を行う3つのデメリット
家族経営には、デメリットも存在します。デメリットを理解し、対策を練ることで成功する可能性が上がるため一つひとつ見ていきましょう。
1.ワンマン経営になりやすい
家族経営のデメリットとしてまず挙げられるのが、ワンマン経営になりやすいことです。家族経営の場合、創業者とその家族や身内の意向が反映されやすい傾向にあります。
そのため、従業員が意見を出しても採用されないことも少なくありません。こうなってしまうと、社内の風通しが悪くなり、独裁的なワンマン経営となってしまう可能性があります。
2.家族間での対立が生じやすい
日々仕事をしていく中で、従業員同士で意見が対立することもあるでしょう。同じように、経営陣である創業者一族の中で意見の食い違いなどが発生する可能性も少なくはありません。
この対立が長期的になってしまった場合には、創業者以外の従業員たちの居心地が悪くなってしまうことも考えられます。最悪の場合には、会社の存続問題に関わる可能性があるというデメリットがあることも覚えておきましょう。
3.会社を私物化する可能性がある
家族経営を行う会社の中には、私用で使う車の購入費やプライベートな遊興費などを会社の経費で落とすなど、会社を私物化するというデメリットもあります。
さらには、会社の人事も創業者一族で決めるところもあります。例えば、お気に入りの従業員には重要な役職を与え、気に入らない従業員は切り捨てるなどです。能力ではなく、創業者一族の好みで固められた会社では、いずれ経営が傾いてしまう可能性があります。
家族経営で起こりがちな問題点の事例
次に、家族経営で起こりがちな問題点を具体的に見ていきましょう。
1.親族内承継後も前社長が経営に口を出し、社員が混乱する
高齢になった前社長が現役を退き、会長に就任。その息子が社長となったにも関わらず、会長が経営に口を出してきて、「社長と会長で言っていることが違う」というのもワンマン経営の会社によくある問題です。
親族内承継の問題は、準備不足で起こることが非常に多くあります。メリット・デメリットを正しく理解することでリスク管理ができるため、親族内承継をお考えの方は以下の記事もご覧ください。
2.親族争いで金銭的なトラブルに発展する
例えば、兄弟間のトラブルで兄は会社に社長として残るけれど、弟は保有株式の買取と退職金を得て退職してしまい結果として会社の資金が多く流出してしまったケースもあります。
このように、家族間での対立や派閥争いが生まれると、従業員も離れてしまいます。
3.優秀な人材が離れてしまう
家族経営は、経営層が親族で固められることが多くなります。そのため、従業員の中に重役になれるポテンシャルを持つ社員がいたとしても、「どんなにやっても経営には口出せないから…」と離れてしまうケースがあります。
家族経営を成功させるには、3つのポイントを押さえておく必要があります。次の項目で見ていきましょう。
家族経営を成功させるためのポイント3つ
家族経営のメリットを活かしつつ、デメリットを補うためにはどのようなことに気をつけるとよいのでしょうか。ここでは、家族経営を成功させるために意識しておきたいことを解説します。
1.会社の私物化を避ける仕組みを作る
家族経営は会社が私物化されやすい傾向があります。そこで、社外取締役など客観的な立場で経営の監督を担ってくれる役職を設置するなど、会社の私物化を避ける仕組み作りをする必要があります。
これは一般的にガバナンス体制の強化とも呼ばれ、健全な企業経営をするために必要となる部分です。特に家族経営では視野が狭くなるため注意しておきましょう。
2.公私の区別をつける
前述した通り、家族経営を行う会社では、会社を私物化するところが多いと言われています。クリーンで風通しの良い経営を行うためには、公私の区別をつけることも重要です。
極端な話をすると、親族で相続トラブルがあったとしても会社の意思決定には私情を一切入れず、会社にとって有益かどうかを判断する必要があります。
また、会社の経費をプライベートなことに使ってしまうこともよくある問題です。公私の区別は明確につけるよう意識しましょう。
3.親族と従業員を公平に扱う
待遇の面や仕事量、役割などの面で親族と従業員を公平に扱うことも重要な要素の一つです。先ほどの事例でお話した通り、親族だけをひいきしてしまうと、本来会社にとって大きな力となってくれる社員が離れてしまいます。
今現在の経営層が親族になっているとしても、社員の働きぶりや成果で重要な役割を与えるのは大切なことです。
また、優秀な従業員がいるのであれば親族外承継も選択肢の一つです。詳しくは以下の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
家族経営でお悩みのことがありましたら、無料相談をご利用ください
私たちアウル税理士法人では、税務だけでなく経営の悩みにもお答えする無料相談を実施しています。
「これから家族経営になりそうだけれど、問題が起きそうで不安」「親族内で継がせるか、従業員で継がせるか迷っている」などお悩みのことがございましたら、お気軽にご相談ください。
コラム:家族経営に成功した事例2選
実はあなたがよく知っている大手企業の中にも、家族経営に成功した会社があります。ここでは、家族経営に成功した2社の事例をご紹介します。
1.ファーストリテイリング(ユニクロ、GUなど)
ファーストリテイリングは、ファストファッションブランドである「ユニクロ」や「GU」を手がける会社です。現在の同社の代表取締役会長兼社長を務める柳内正さんが、父親の創業をした紳士服専門店を手伝ったことが始まりでした。
その後、父親から事業を継承し、それまでの紳士服専門店から低価格でオリジナルブランドを販売する会社に変貌させ、ブランドのイメージを一新させています。2018年以降は、柳内さんの二人の息子さんが同社の取締役としてご活躍されているようです。
2.トヨタ自動車
トヨタ自動車は、軽自動車から高級車までの製造・販売を手がける日本最大手の自動車メーカーです。前進は、
章男さんが社長に就任したとき、トヨタ自動車の経営状況は厳しいものでした。しかし、いい車を作ることに注力し、製品開発に取り組んだ結果、販売台数は順調に回復していったのです。そして、2020年からは3年連続で世界販売首位を獲得しています。
まとめ
今回は、家族経営について解説しました。最後にポイントを振り返りましょう。
- 家族経営は親族が所有・経営する会社のこと
- 家族経営のメリットは「経営理念が浸透しやすい」「意思決定のスピードが速い」「長期的な戦略を練れる」
- 家族経営のデメリットは「ワンマン経営になりやすい」「家族間での対立が生じやすい」「会社を私物化する可能性がある」
- 会社の私物化を避ける仕組みを作る(ガバナンス体制の強化)
- 公私の区別をつける
- 親族と従業員を公平に扱う
上記のポイントを押さえて、家族経営を成功させるため改善していきましょう。
また、家族経営を続けていくには、整った教育体制も必要です。しかし、社内で研修をするにはノウハウが足りない、人的コストがかかり過ぎるといった悩みもよく耳にします。
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