親族外承継とは? 後継者不足に悩む経営者におすすめの理由やメリット・デメリットを解説

親族外承継とは? 後継者不足に悩む経営者におすすめの理由やメリット・デメリットを解説

札幌は大通にあるアウル税理士法人は、事業承継に関するご相談・ご依頼を得意としています。最近よくあるご相談の中で顕著なのが「後継者不足」です。身内・親族に会社の後継者がいないため、廃業を視野に入れている方も多くいらっしゃいます。

そういった方には、身内・親族にとらわれない「親族外承継」をおすすめしています。現代の中小企業の5割以上が、実は親族外承継を活用しているのです。

そこで今回は、親族外承継の基礎知識と、メリット・デメリットをフェアに解説していきます。「地域社会への貢献のためにも事業は存続したい」「後継者にふさわしい相手を探している」という方は、ぜひご参考ください。

事業承継の一つである「親族外承継」とは「社員や社外の者に事業を譲渡すること」

親族外承継」とは、身内・親族以外の人物に事業を譲ることをいいます。事業承継の候補が息子や兄弟である「親族内承継」に対し、血縁関係にない他人が候補となるのが「親族外承継」というわけです。

一般的には、信頼できる役員や部下に経営権の譲渡が行われます。さらに近年では、M&Aを通じて社外の人物に会社を買収してもらい、その取引をもって実質的に事業承継を行うケースも増えてきています。

中小企業白書の報告によると、積極的に親族外承継を選択する中小企業は年々増加傾向にあるようです。

最大の原因は後継者不足。「東京に行ったきり息子が地元に帰ってこない」「経営者になるつもりがない」といった理由で会社の存続がままならず、廃業を余儀なくされる中小企業が後を絶ちません。

そんな中で事業外承継は、外部から新しい血を取り入れて組織の若返りを図るとともに、地元に縛られることなく、日本全国からふさわしい後継者を探せるという点で、非常に希望のある選択肢だといえるでしょう。事実、中小企業の5割以上が親族外承継を選んでいるといわれています。

親族外承継の主な方法5つ

①株式を保有しつつ従業員を経営者にする「内部昇格」

まず一つ考えられるのは、社内の人材を“昇格”という位置づけで経営者にする方法です。このとき現経営者は株式を保有したままですので、経営に対する影響力を保持できます。相手が信頼できる部下ならば、内部昇格で経営者にしても問題はないでしょう。

②株式を保有しつつ社外人材を経営者にする「外部招へい」

社内に経営者候補がいない場合、外部の企業や取引先の金融機関から候補を見つける方法もあります。このケースでも、現経営者は株式を保有したままにできますから、完全に会社を手放すことにはなりません。

外部招へいは、社内のしがらみにとらわれない柔軟な発想での経営を期待できますが、基盤がないという点ではリスクもあります。何より、社内や株主からの反発が間違いなく起こり得ますので、取り計らいの準備を十分に行って行わねばなりません。

③株式を譲渡して経営権を譲る「マネジメントバイアウト(MBO)」

もともとマネジメントバイアウト(MBO:Management Buyout)とは、より自由な意思決定で事業運営を行うために、経営陣が自社株や事業を買い取ることをいいます。買い手は主に経営者や幹部の経営陣で、売り手は株主であることが一般的です。

このマネジメントバイアウト(MBO)の仕組みは、親族外承継にも利用されています。自社株を保有する経営者自身が、社内の次期経営者候補に株式を売却することで、実質的に事業を譲渡するというわけです。これを事業承継型MBOといいます。

ただし、社内の人間が自己資金のみで自社株を買い集めることは現実的ではないため、たいていの場合は、SPC(Specific Purpose Company:特別目的会社)を立ち上げ、ここを経由に金融機関から資金調達することになります。

④従業員に株式を譲渡する「エンプロイーバイアウト(EBO)」

中小零細企業のような、経営者候補となる経営陣がいないケースにおいては、オーナーが従業員に株式を売却する方法もあります。これをエンプロイーバイアウト(EBO)といいます。マネジメントバイアウト(MBO)の従業員バージョンとして考えればよいでしょう。

⑤社外の人物に会社を譲る「M&A」

みなさんもよくご存じの通り、「M&A(Mergers and Acquisitions」とは企業の合併や買収のことです。大企業同士が行うイメージが強いですが、近年では親族外承継の手段として、中小企業も積極的に活用しています。事業承継のマッチングサービスも発展しているため、事業承継の候補者探しも容易になってきています。

親族外承継のメリット3つ

①後継者選びの選択肢が広がる

身内・親族に候補者をこだわる方もいらっしゃいますが、会社の可能性を広げたり、柔軟な発想で新しいビジネスに乗り出したりするという意味では、親族外承継には多くのメリットがあります。

部下のなかには、我が子以上に、会社のことをよく知っている人材がいるはずです。その中に事業承継者を見出すことは、会社にとって決してマイナスではありません。

②能力のある人材に継がせることができる

「会社を継がせた息子が経営者としての資質に欠けていた」というケースは珍しいことではなく、それが親族内承継の難しさといえます。親族内承継にこだわらず、外に目を向ければたくさんの有能な人材が見つかります。

③経営の一貫性を保ちやすい

親族内承継では、「息子を会社に入れて一から育成する」という慣例がよく見受けられます。事業承継を行うまでに、果たしてどこまで満足のいく結果になるかは、非常に見極めが難しいところです。

会社のことを深く理解できないままに経営者としてリーダーシップを発揮しなければならなくなった――という実例は、枚挙に暇がありません。

たとえば社内で親族外承継を行えば、会社の事情・理念・ビジョンをよく知っている部下に経営を譲ることができます。何も知らない身内を一から育てるよりも、はるかに一貫性のある事業運営が期待できるはずです。

親族外承継のデメリット3つ

①株主の理解が得られないこともある

「外部の人間に経営を任せて大丈夫なのか?」「〇〇家の一族経営だから信用していたのに」といったように、親族外承継ではしばしば株主の不信感を煽るリスクがあります。

とくに外部招へいやM&Aは、これまでの事業運営に携わっていない人物が経営を担っていくことになるため、大きな反発を招くことは想像に難くありません。株主への影響を配慮して上手に立ちまわっていく必要があります。

②人が離れていく可能性もある

組織のトップが変わるということは、その下で働く人たちの気持ちも変わるということです。

組織の中で“派閥”が形成されていることも珍しくなく、「あの人が経営者になるくらいなら会社をやめる」と考える従業員も出てきます。もちろんこうした事態は親族内承継であっても起こり得ることですので、ある意味では仕方のないことではあると思います。

③先代の個人保証債務がネックで事業承継が難航することもある

中小企業では珍しくありませんが、会社の債務が個人保証になっている場合、事業承継の際はその個人保証も引き継がなければなりません。

しかし事業承継者の信用が薄いと、金融機関が難色を示すこともあります。「まだ経営者として実績もない人物が債務を引き継いで、万が一会社が倒産になったら貸し倒れになってしまう」と考えるためです。

親族外承継を成功させる為に押さえておきたい3つのポイント

①後継者を育てる時間を確保する

事業承継の決断は早ければ早い方が何かと有利です。その理由の一つが、なんといっても人材育成でしょう。経営者として人の上に立つ以上は、経営のイロハだけでなく、リーダーシップについても学ばなければなりません。事業承継の候補者を定めたら、すぐに本人の意思を確認し、育成に入っていきましょう。

②関係事業者からの理解を得る

取引先や金融機関にも、親族外承継を行う旨をしっかり伝えておきましょう。とくにM&Aの場合、金融機関は非常に警戒します。

③自主株を買い集める資金の用意をする

マネジメントバイアウト(MBO)またはエンプロイーバイアウト(EBO)の場合、社内の者がオーナーから自社株を買い取ることになるため、潤沢な資金が必須です。しかし経営者ではない一個人がそこまでの資金を用意するのは現実的ではありません。

そこで役立つのがSPC(Specific Purpose Company:特別目的会社)です。一個人が金融機関から莫大な額の資金を融通してもらうことは難しいですが、SPCという機関を経由すれば、資金調達が容易になります。つまり、自社株の買い手を「個人」ではなく「SPC」にスイッチするわけです。それがSPCを立ち上げる意義です。

具体的な手順と流れは大まかに以下のようになります。

STEP.1 会社の後継者がSPCを立ち上げる
STEP2. 後継者がSPCに一部出資する
STEP.3 金融機関がSPCに出資を行う
STEP.4 現経営者がSPCに株式を譲渡する
STEP5. SPCがプールされた資金で株式を購入する
STEP6. SPCが株主となる
STEP.7 最終的にSPCと会社が合併して新しい会社として再スタートする

このようにみてみると、「SPC」と「先代の会社」が小さなM&Aをしているような図式になっていることがわかりますね。事実、マネジメントバイアウト(MBO)またはエンプロイーバイアウト(EBO)は「信頼できる部下とのM&A」ともいわれています。

まとめ

今回は親族外承継について、親族内承継との違いをふまえながら詳しく解説しました。

近年では、会社の後継者不足に悩む中小企業の経営者も、積極的に親族外承継を行っているといわれています。

親族外承継は、有能な人材を経営者にできる可能性が広がるため、時代の変化やニーズに応えられる会社づくりを期待している方にもぴったりです。

札幌大通りにあるアウル税理士法人は、親族外承継も含めた事業承継に関するご相談を得意としています。

ただ単に税務を行うだけでなく、事業者の想いや情熱をしっかり受け止めて、税務を超えた部分でも積極的にサポートいたします。「事業のことについても相談にのってほしい」「今後の事業の行く末が心配」という方も、ぜひお気軽にご相談ください。

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