資金繰りが上手くいかない、後継者が見つからないなどが原因で、会社をたたむ経営者は少なくありません。
しかし、実際に会社をたたむためには、どのような手続きが必要で費用はどのくらいかかるのでしょうか?
今回は、小さな会社をたたむために必要な手続きと費用について解説します。
最後に、経営が苦しい状態の会社を存続させる方法もご紹介します。会社の廃業についてお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
【要点まとめ】
- 会社解散の準備
- 株主総会での解散決議・清算人選任決議
- 解散・清算人の選任を登記
- 会社解散の届出
- 会社解散の公告
- 解散時の決算書類作成・確定申告
- 決算報告書の作成・株主総会での承認
- 手続きにかかる費用(40〜60万円弱)
- 従業員に支払う費用(退職金・解雇予告手当)
小さな会社をたたむ流れとは?
会社をたたむためには、次の法律上の手続きが必要です。順番に解説していきます。
- 会社解散の準備
- 株主総会での解散決議・清算人選任決議
- 解散・清算人の選任を登記
- 会社解散の届出
- 会社解散の公告
- 解散時の決算書類作成・確定申告
- 決算報告書の作成・株主総会での承認
①会社解散の準備
法的な会社をたたむ手続きの前に、次の事業終了に伴う準備をします。
- 従業員や取引先、金融機関への事業終了の説明
- 買掛金・未払金・借入金・従業員への給料の支払い
- 会社が加入していた生命保険・損害保険の解約
- 売掛金・未収金・貸付金等の回収
- 各種契約の解約
事業を終了しても、会社の解散・清算という法律上の手続きの完了までには時間がかかります。営業終了日までに解散準備を終えるためにスケジュールには余裕を持ちましょう。
②株主総会での解散決議・清算人選任決議
会社をたたむ時には、株主総会での解散決議が必要です。発行済株式の過半数以上の株主が出席し、3分の2以上の賛成が得られれば会社解散が決議されます。
株主総会では、実際に廃業手続きを行う清算人の選任も行います。解散後の会社は、清算を行う目的でのみ存続することがほとんどです。取締役は解散と同時に退任し、清算人が会社の清算を行います。取締役が清算人になることが多いですが、定款によって顧問弁護士が清算人に指定されている場合もあります。
③解散・清算人の選任を登記
株主総会で決議された会社の解散と清算人の選任について登記します。株主総会での決議から2週間以内に、管轄の法務局にて行う必要があります。
④会社解散の届出
次の税務・労務に関わる手続きを行います。
- 税務署に「異動届出書(法人税)」「事業廃止届出書(消費税)」「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(源泉所得税)」「青色申告の取りやめの届出書」などを提出
- 都税事務所や県税事務所など、法人の住民税・事業税を管轄している行政機関に「異動届出書」を提出
- 年金事務所に「健康保険・厚生年金保険適用事業書」「被保険者資格喪失届」などを提出
- ハローワークに「雇用保険適用事業所廃止届」「雇用保険被保険者資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」などを提出
- 労働基準監督署に「確定保険料申告書」「労働保険料還付請求書」などを提出
社会保険は解散登記から5日以内に、雇用保険は事業を廃止した日や退職日から10日以内に、労災保険は事業廃止から50日以内に提出することが義務付けられています。
⑤会社解散の公告
会社をたたむ旨を、国が発行する官報に掲載して公告します。ここで、債権者に対して債権を申し出ることを呼び掛けます。2ヵ月以上は債権の申し出の期間を設ける必要があります。
⑥解散時の決算書類作成・確定申告
会社の財産を把握して分配・納税を行うために、財産目録と貸借対照表を作成する必要があります。決算書類を作成後、株主総会での承認を得て次の手続きを行います。
(1)会社解散・清算の確定申告
解散事業年度及び清算事業年度の各末日の翌日から2ヵ月以内に、解散に関する確定申告を行います。この確定申告の提出については特例的に延長することもできます。
(2)債権回収・債務弁済
不動産や有価証券などといった会社資産を売却し、債権回収を行います。回収した資金と会社に残っている現預金で会社の債権者に弁済を行います。
すべての債務を弁済しきれない場合は、通常清算から倒産手続きに切り替えます。
(3)残余財産の確定・分配
債務弁済後に残った財産を株主に分配します。
⑦決算報告書の作成・株主総会での承認
清算人は「清算結了決算報告」を作成し、株主総会で承認を得る必要があります。承認を経た後に次の作業を行うことで、会社の法人格が消滅します。
(1)精算結了登記
上記の決算報告書が承認されてから2週間以内に、管轄の法務局で精算結了登記を行います。これが受領されて初めて、会社の登記簿が閉鎖されることになります。
(2)残余財産の確定申告
残余財産が確定した日の翌日から1ヵ月以内に、残余財産確定事業年度の確定申告を行います。しかし、この1ヵ月間に残余財産の最後の分配が行われる場合は、分配実施日の前日が期限になります。
(3)清算結了届
清算結了登記後の謄本を添付した「清算結了届」を、管轄の税務署に提出します。精算結了届の提出によって法律上の廃業が認められ、会社をたたむ全てのプロセスが完結します。
会社をたたむときにかかる費用
小さな会社であっても会社をたたむ時には、費用がかかります。
会社をたたむ手続きにかかる費用
会社をたたむ手続き上の費用として、トータルで40〜60万円弱はかかると思っておきましょう。
- 解散登記:3万円
- 清算人選任登記:9,000円
- 清算結了登記:2,000円
- 官報公告の掲載費用:10行分で約3万5,000円
- 上記の手続きを司法書士に依頼をする費用:5~8万円
- 会社をたたむ時に必要な決算を税理士に依頼する費用:30〜50万円
従業員に支払う費用
会社をたたむ時には、従業員に退職金を支払わなくてはいけない場合もあります。解雇を行う場合には解雇予告手当を支払う必要があります。
従業員への退職金
退職金の規定は原則として就業規則で定められています。
社労士を入れて就業規則を作った場合や、先代の社長が退職金規定を作った場合は、現社長が従業員の退職金について把握していない場合も少なくありません。退職金は会社をたたむ費用の中で大きな割合を占める可能性があるため、廃業を検討している場合は就労規則の確認をしておきましょう。
従業員への解雇予告手当
「経営状況が悪化して従業員の雇用を継続できない」など、やむを得ない理由で従業員を解雇する場合は次のいずれかの手続きが必要です。
- 少なくとも30日前に解雇の予告をする。
予告の日数が30日に満たない場合は、その不足日数分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。 - 予告のない解雇を行う場合は、解雇と同時に30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
会社をたたむためには何かとお金がかかります。資金繰り計画を立てた上で、会社をたたむためのスケジュールを作成しましょう。
本当に会社をたたむべき?再検討してほしい会社の存続方法
さまざまな事情で、会社をたたむ方が賢い場合もあります。しかし会社をたたんでしまうと、今まで築いてきたブランドや人材、スキルやノウハウも失ってしまいます。廃業は最後の選択肢として残しておき、会社を存続させるための手段を模索することをおすすめします。
会社を存続させる方法を2つご紹介します。会社をたたむか悩んでいる方は、ぜひ会社を存続させる方法も検討してみてください。
休眠会社にする
顧客が待っていてくれる場合や、少し休めば復帰が見込める場合には、休眠会社にするという選択肢があります。
後継者探しや資金援助のためにM&Aを活用する
後継者不足や資金不足が原因で、会社をたたむことを検討している場合には、M&Aが有効な解決策となるでしょう。スポンサー企業に事業の一部や株式を譲渡して資金援助を受けたり、会社ごと買収してもらったりすることで会社を存続させることができます。
M&Aについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
おわりに:廃業をご検討している方へアウル税理士法人ができること
今回は、小さな会社をたたむために必要な手続きと費用について解説しました。
この記事のポイントをおさらいしましょう。
- 会社解散の準備
- 株主総会での解散決議・清算人選任決議
- 解散・清算人の選任を登記
- 会社解散の届出
- 会社解散の公告
- 解散時の決算書類作成・確定申告
- 決算報告書の作成・株主総会での承認
- 手続きにかかる費用(40〜60万円弱)
- 従業員に支払う費用(退職金・解雇予告手当)
本当に会社をたたむべきかは十分に検討しましょう。M&Aなどで会社を存続させる方が良い結果につながる場合も多いです。
M&Aを検討する場合や実際に会社をたたむ場合には、手続きや最適なタイミングについて早めに専門家に相談することがおすすめです。
札幌大通りにあるアウル税理士法人では、経験豊富な税理士・公認会計士が、M&Aによる事業承継をサポートいたします。
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