「利益という資産の作り方」(利益づくり)の話 第2回

「利益という資産」…職業会計人としてあるまじき、奇妙な表現です。その理由は、第1回で述べたとおりです。この言葉の真意は、利益には何かを生み出す力があるということです。

利益には3 つの役割がある。
第一に、利益は事業活動の有効性と健全性を測定する。
第二に、利益は陳腐化、更新、リスク、不確実性をカバーする。
第三に、利益は、(中略)事業のイノベーションと拡大に必要な資金の調達を確実にする。
『現代の経営』

ドラッカー教授は、「利益」の役割を明示しました。マネジメントでは「利益」に明確な役割を与えています。会計は利益を算定し、株主や投資家、債権者に情報提供することにあります。つまり両者には、明確な役割の違いがあるのです。

マネジメントにおける利益の役割(目的)→企業存続のための実体的なもの
会計における利益の役割(目的)→株主や投資家、債権者に対する情報提供

「何かを生み出す力」という意味では、第三の役割が最も妥当します。つまり「利益(前回説明したとおり、利益剰余金という意味)」には、資金を生み出す力があるといえます。利益剰余金(内部留保)が多ければ、それに応じて銀行は資金を貸し出すでしょう。また増資によって資金を調達する際にも、発行単価が高くなることをとおしてより多くの資金を集めることができるでしょう。くどい説明は不要ですね。

第二の役割は、前回、利益は存続の条件であると述べたことを具体的に述べたものです。将来、企業が消滅するリスクを減じることをとおして未来を生み出す力をもっています。リスク等の違いの簡単な説明は、次のとおりです。

陳腐化  ―  所有する設備などの劣化など物理的機能低下すること
更新  ―  所有する設備などが技術革新等により旧式化すること
リスク  ―  市場における販売リスクのこと
不確実性  ―  過去に例がなく成果を予想できないもの

イノベーションなど新しいサービスなどは事前評価が事実上不可能で「不確実性」の中に入ります。自然災害やコロナ禍のようなパンデミックなども不確実性の範疇に入ります。

陳腐化や更新による設備等を入れ替えの場合は、減価償却費などでコストを発生させ、利益計算の中に適正に組み込まれています。

問題は、市場リスクと不確実性です。わかりやすい例を考えてみましょう。今回のコロナ禍で生じた損失は誰が負担するのでしょうか。国や地方自治体が負担に応じてくれないのは明確です。コロナ禍は、私たちに不確実性の負担が自社にあることをあらためて教えてくれます。

では負担する原資はどこにあるのでしょうか。

負担原資は、利益(利益剰余金)しかありません。リスクや不確実性が実現しても企業の存続に問題がない金額の目安となるのが利益剰余金(内部留保金)なのです。過去の利益の蓄積が企業を救うということです。

利益とは、(中略)リスクに対する保険であり、経済活動の基盤となるものである。
『企業とは何か』

ドラッカー教授は、利益は未来のリスクに対応するための保険料だといいます。余剰ではなく、未来を生き抜く原資だというのです。コロナ禍は、そのことを私たちに実感をって教えています。あなたの企業は未来を生きるためにどれだけの燃料をもっていますか?

第三の役割については次回とします。

【参考】
『実践するドラッカー[利益とは何か]』第5章

『ドラッカーを読んだら会社が変わった』物語4

【関連記事】

利益の役割―その2 利益は資金調達の基盤となる

利益の役割―その1 利益は未来のリスクをカバーする
 

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