「フリーランスとしてイラストレーターをやっているが、確定申告のことが何もわからなくて今更ながら不安になってきた」
「あんまり稼げてないけれど、自分は来年確定申告が必要なのかな?」
「フリーランスになったばかりで、税金のことが何もわからない……」
「来年の税金はいくらになるの? 払えなかったらどうしよう」
このようなお悩みや不安はございませんか?
確定申告とは、その年の全ての収入・経費・控除を差し引きし、合計所得額を申告して、翌年に支払うべき所得税などの額を確定するための手続きです。
サラリーマンは「年末調整」という形で会社が代わりに納税申告をやってくれますが、独立して仕事をしている方は「確定申告」で自分でやらなければなりません。
新年度の「所得税」「住民税」「国民年金」「国民健康保険」は前年の確定申告内容をベースに決まりますので、確定申告をサボると支払う額にも大きな影響を及ぼします。
また確定申告をサボると、悪気はなくても「脱税」の扱いを受けてしまいます。場合によっては、税務署から重いペナルティを課せられ、さらに税金がのしかかることも。
結論をいいますと、基本的に個人事業主は、所得が48万円以上あれば確定申告を行う必要があります。しかし48万円以下でも、青色確定申告をすれば税金や国民健康保険料が軽減するというメリットの恩恵を受けられます。
- 経費や控除を差し引いて48万円「以下」なら申告は基本不要
- 給与所得がある個人事業は副業所得20万円以下なら申告不要
- 副業所得20万円以上なら確定申告
- 副業所得20万円以下なら確定申告不要
- 個人事業を続けていくなら青色申告を選ぶべき
- 青色申告はお金(節税)の面でかなりのメリットがある
- 白色申告は帳簿記載が簡素でラクだがそれ以外にメリットが少ない
この記事では、個人事業主が絶対に知っておくべき確定申告の基礎知識と、確定申告で得られるメリット(所得控除など)や申告の流れについて解説します。
最後まで読めば、税金の仕組みがわかるだけでなく、来年に自分がどれくらい税金を納めることになるのかある程度見通しがつくため、安心して来年の確定申告に備えることができるようになりますよ。
確定申告はいくらから?基本は「所得48万円以上」
- 経費や控除を差し引いて48万円「以下」なら申告は基本不要
- 給与所得がある個人事業は副業所得20万円以下なら申告不要
まずは一年の収入から経費や控除(基礎控除・医療費控除・社会保険料控除など)を差し引いてみてください。その時点で48万円以下なら、基本的には確定申告は不要です。なぜなら、青色申告であろうと白色申告であろうと誰でも受けられる基礎控除が「48万円」だからです。
もちろん「全然収入がなくて、経費と控除を差し引いたらマイナスになってしまった」という方も確定申告は不要ですよ。
48万円以上なら、確定申告をする必要があります。その際は「白色申告」か「青色申告」どちらかを選ばなければなりません。詳細については後述します。
給与所得のある個人事業主は副業収入20万円以下なら申告不要
- 副業所得20万円以上なら確定申告
- 副業所得20万円以下なら確定申告不要
- 源泉徴収されているなら20万円以下でも確定申告すれば「還付金」が戻ってくるかも
個人事業主は自由な働き方ができるのも強みの一つ。たとえば「夏はアクティビティサービス事業をやって、冬はスキー講習のインストラクターとして働く」といった働き方も可能です。また「開業届は出したが、事業が軌道に乗るまではサラリーマンを続ける」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
上記のような働き方では、「個人事業主としての収入+給与所得」が収入の内訳です。こういったケースでは、個人事業主として活動して得た収入(副業収入)が「20万円」という数字が、確定申告のラインとなります。
副業で発生した所得から経費・控除を引くと……
20万円「以下」 | 確定申告は不要 |
20万円「以上」 | 確定申告は必要 |
ただし、もしも個人事業主としての報酬がクライアントから源泉徴収(所得税の前払いとして報酬から税金が差し引かれること)されているなら、たとえ20万円以下の所得でも、確定申告により還付金を受け取れる可能性があります。
還付金とは要するに、「払いすぎてしまった所得税が戻ってくること」です。源泉徴収では、しばしば還付金が発生します。まずは源泉徴収をされたかどうかの事実確認をしましょう。クライアントに「源泉徴収込みで請求書を送ってください」と言われたことはありませんか? 副業収入を得ている個人事業主サラリーマンの方は、その年に自分が発行した請求書を確認してみてください。
所得「40万円以下」「マイナス(赤字)」でも確定申告をすると税金・国民健康保険料を安くできる
基本的には経費・控除を差し引いた所得がマイナス(赤字)であれば、確定申告の必要はありません。とくに「ものは試しと開業して小さな事業を始めてみたが、やっぱり今後はサラリーマンに戻ろう」と考えている方は、なおさら確定申告は必要ないといえるでしょう。
しかし、今後も個人事業主として事業を続けていくのであれば、たとえ所得が「40万円以下」あるいは「マイナス(赤字)」であっても、確定申告はしておいたほうが税金・保険料の面でかなりメリットがあります。後述しますが、青色申告で確定申告をしておけば、赤字分を翌年以降に計上して節税することができます。
また、今年の収支が赤字であることを確定申告で報告すれば、翌年の国民健康保険料が安くなる可能性があります。
いずれにせよ、「確定申告をすれば今年の赤字を来年以降に活かせる」と覚えておきましょう。
確定申告は白色申告よりも青色申告がおすすめ。「基礎控除額が大きくて節税になる」の他にもメリットがあります
- 個人事業を続けていくなら青色申告を選ぶべき
- 青色申告はお金(節税)の面でかなりのメリットがある
- 白色申告は帳簿記載が簡素でラクだがそれ以外にメリットが少ない
青色申告 | 白色申告 | |
---|---|---|
開業届け | 必要 | 不要 |
基礎控除 | 一律48万円 | 一律48万円 |
特別控除 | 最大65万円 | ナシ |
赤字の翌年繰越 | できる | できない |
家族への給料払い | 経費にできる | 経費にできない |
帳簿方式 | 複式簿記(やや面倒) | 単式簿記(簡単) |
さて、確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。大きな違いは、基礎控除額の大きさです。
青色申告は、令和2年度から最大65万円の特別控除を受けることができるため、申告する所得をその分だけ抑えて、税金負担を軽くすることが可能です。
ただし青色申告は、事前に税務署に「開業届」を提出しておくことが必須条件です(開業届の提出は書類を出すだけなので簡単です)。「今年は青色申告で多めに控除を受けたい」という方は、年内のうちに必ず開業届を出しましょう。
他にもまだ青色申告のメリットがあります。それは今年の赤字を翌年以降に繰り越して所得に反映できるという点です。たとえ翌年が「たくさん稼いだ年」であっても、前年の赤字を反映させて差し引くことが可能ですので、税金を抑えられます。こういうことができるのは、青色申告ならではの強みです。
これからも継続的に個人事業をやっていきたい方は、青色申告を選ばない理由がないといっても過言ではないでしょう。
また、青色申告であれば、家族を従業員として雇っている場合、支払った給与を「事業専従者控除」として経費計上できます。しかし白色申告では出来ません。
一方で、白色申告の唯一のメリットは、帳簿の書き方が非常に簡単だという点です(単式簿記)。
しかしそれ以外のメリットは特にないというのが正直なところです。税制面での優遇は、青色申告に比べてはるかに劣ります。開業届けと一緒に「青色申告承認申請書」を提出しない限りは強制的に白色申告になってしまいますので、年内のうちに早めに行動を起こしましょう。
「どうしていいかわからない方」や「自分で書類を書く自信がない」という方は、お近くの税務署に直接行って、スタッフさんに教えてもらいましょう。どこの税務署に尋ねるべきか迷った時は、以下の国税庁のホームページ国税庁のホームページ「税務署の所在地などを知りたい方」をご覧ください。
個人事業主の青色確定申告のやり方・流れ
以下では、開業届けから青色確定申告のやり方・一連の流れをコンパクトに解説します。難しそうに思われがちですが、実はたった3ステップで完了する簡単な手続きです。
STEP1. 開業届を提出する
まずは「開業届」の書類を用意しましょう。開業届は、税務署に置いてありますし、国税庁のサイトからPDFをダウンロードすることも可能です。「書類に不備がありそうで心配」という方は、直接税務署でスタッフの力を借りながら開業届を書くこともできますよ。
書類を書くにあたって大切なのは、「開業日をいつにするか」です。原則「開業から1ヵ月以内」とされていますが、実は日付をさかのぼって開業日を指定することができます。
たとえば、個人事業主として収入を得られるようになったのが7月だったとしても、今年の3月を開業日に指定することが可能です。ただし、開業届の提出日の変更はできません。
開業届を出したら、「青色申告承認申請書」も忘れず提出しましょう。これがなければ翌年青色申告ができません。開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出するのがベターです。
STEP.2 帳簿付けをする
個人事業主としてお金の出入が発生しているものは、すべて帳簿に記載します。必ず証拠(レシート・領収書・請求書)は保管しておいてください。
青色申告では複式簿記となります。単式簿記とは違って、簿記の専門知識がある程度要求されるため、一人で難しい場合は、税理士などの専門家にまかせたほうが無難です。
申告内容に不備があると、税務署から調査が入り、場合によってはペナルティを受けることもあります。ペナルティは「追加徴税」という形で行われるため、金銭的にかなり負担になります。
STEP.3 確定申告書の作成して提出する
帳簿の内容をもとに、確定申告書を作成していきます。確定申告書は税務署や国税庁のサイトから入手可能です。申告書の内容に従って、必要項目を記入していきましょう。
手書きで記入 | 税務署や国税庁のサイトから入手可能。 直接税務署に持っていくか、郵送にて提出する。 |
国税庁のサイトから電子入力 | 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からパソコン・スマートフォンで入力する。 自動計算機能もあるため便利。e-Taxにも対応。 |
会計ソフトで入力 | 使い慣れれば最も使いやすい。 会計知識がほとんどなくてもラクに確定申告書を作成できる。初期費用がややネック。 |
まとめ
- 経費や控除を差し引いて48万円「以下」なら申告は基本不要
- 給与所得がある個人事業は副業所得20万円以下なら申告不要
- 副業所得20万円以上なら確定申告
- 副業所得20万円以下なら確定申告不要
- 個人事業を続けていくなら青色申告を選ぶべき
- 青色申告はお金(節税)の面でかなりのメリットがある
- 白色申告は帳簿記載が簡素でラクだがそれ以外にメリットが少ない
アウル税理士法人
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