「人という資産の作り方」(人づくり)の話 第1回

人材人財と表現することがあります。人は材料ではなく、財産であることを強調した言葉です。経営資源といえば、ヒト、モノ、カネといわれた時代があります。

しかしカネは、利息もつかないほどの低金利。これは、世の中に投資先がない状態を示しています。人々は、事業への投資ではなく、やむなく株や不動産などにお金を投じます。カネの価値を生み出す力が低下しているということです。モノも同様です。モノの余り時代には、カネさえあれば買えないものはそう多くはありません。

カネやモノが価値を生み出す時代は、過去のものとなり、いまやヒトが唯一の本源的経営資産といわれます。しかし資源は使えばなくなるという意味を含んでいます。

いまやヒトは、使えば使うほど価値を生み出す力を高める存在です。なぜか。

知識労働者と呼ばれる人が増えたからです。知識を武器に仕事をする人の特徴は、経験を積めば積むほど大きな価値を生み出す力を組織に与えることです。知識労働者は、通常、経営者よりも専門知識に長けています。現場にいる人が最も経験知を持っているからです。

現代社会では、厨房に入った経験のない飲食店の経営者や設計図を書いた経験のないハウスメーカーの社長などが要る時代です。つまり各専門領域において知識労働者が事業を行うプロセスで価値を生み出している時代なのです。

ヒトそのものは、会社の所有物ではありません。実際は、事業に価値を付加する源泉は、知識そのものです。その意味では、知識がより本源的な経営資源であるといえます。その資源を有しているのが、ヒトだということです。

その意味では、「人という資産」という表現は、その人の持っている知識やスキル、経験を必要な時に必要な形で提供してくれる状況をつくり出すことをいいます。

そのために必要な視点は、その人の知識やスキル、経験などの価値を生み出す力を高める場をどうやって作るかという問題と、その力をフルに生かしてもらうという問題に取り組まなければなりません。

前者の問題は従来、人材育成と呼ばれた領域であり、後者の問題は動機づけ(モチベーション)と呼ばれた領域です。「と呼ばれた」と過去形を用いたのには、訳があります。この点については、次回にしたいと思います。

【参考】
『実践するドラッカー[チーム編]』第2章

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アウル税理士法人主宰:経営塾21Next
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